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全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています  作者: Karamimi


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第42話:藁をもすがる思いで~ワイアーム視点~

「立ち話も何ですから、どうぞこちらへ」


 マレディア侯爵に案内され、屋敷に入った。


「マレディア侯爵、確か侯爵家には、当主のみが入れる部屋がありましたよね。無理を承知で申し上げます。どうかその部屋に、僕も入らせてください。その部屋になら、セーラを目覚めさせられるヒントになる様なるものが隠されているかもしれません」


 無理を言っているのは分かっている。代々当主のみが入る事を許された、大切な部屋だ。そんな部屋に、僕の様な部外者が入っていい訳がない。それでも…そこにセーラを目覚めさせるヒントが隠されている様な気がするのだ。


「ワイアーム殿下、頭をお上げください。あなた様が我が家に来る理由は、私共もある程度把握しております。実はあの部屋は、例外として過去に何人か入った事はあるそうなのです。今回も例外として、殿下が入る事を認めます。ただ、セーラは入れませんので」


 僕の腕の中で眠るセーラに目をやった。要するに、入るならセーラは置いていけということだな。


「ありがとうございます、マレディア侯爵。分かりました、セーラは置いていきます」


 正直セーラと離れたくはない。でも、マレディア侯爵は僕の為に、部屋に入る事を許可してくれたのだ。これ以上我が儘を言う訳にはいかない。


「それでは、セーラはこちらの部屋へ。私どもは、セーラを見ておりますから」


 元夫人に案内されたのは、どうやらセーラの部屋の様だ。初めて入ったセーラの部屋。セーラはここで生まれ育ったのだな…そう思うと、なんだか胸がいっぱいになった。


 そっとセーラをベッドに寝かせた。


「どうかセーラをお願いします。出来るだけ早く戻ってきますので」


 女性たちに声をかけ、マレディア侯爵と一緒に、部屋から出た。


「殿下、こちらの部屋です。この部屋は、使用人も入る事が許されておりませんので、かなり埃っぽいのですが、どうぞご了承ください」


 頑丈な鍵を開けるマレディア侯爵、ドアを開けた先にもドアがあり、そこの鍵も開けた。どうやら2重ドアになっている様だ。


「どうぞこちらです」


 マレディア侯爵に案内され、部屋に入る。確かにかなり埃っぽい。それでも立派な本棚がいくつもあり、そこにはぎっしりと本が詰まっている。


 あれ?この肖像画は…


「セーラ?」


「セーラによく似ているでしょう?彼女が海神ポセイドンの娘、ネリーヌです」


 肖像画には、青い髪に青い瞳をした美しい女性が描かれていた。顔の造りもセーラと瓜二つだ。この人が伝説の女性、ネリーヌか…


「殿下、こちらが全て、歴代のマレディア侯爵家当主が記した手記です。こっちは侯爵家ゆかりの人物が書いた手記です。ここに唯一ネリーヌの血を色濃く受け継いでいたにもかかわらず、地上に留まった女性の父親が書いた手記があります」


 マレディア侯爵が手渡してくれた手記に目を通す。


 “娘、ネフェリアは16歳を過ぎても、地上に留まる事が出来た。きっと愛する夫、アランの存在が大きかったのだろう。2人の愛に、さすがのキースも手を出せなかったのでは、そう思っていた。ただ…”


「ただ…一体何が起こったのだ?侯爵、この後の部分が、破られている様ですが」


「ええ、なぜかこの後の部分が、何者かによって破られていたのです。書いた本人が破ったのか、それとも後の侯爵の誰かが破ったのか…」


「きっとこの後に、重大な何かが書かれていたはずだ。何とかして、破られた部分を探さないと」


「その件なのですが、父も私も、血眼になって探しました。何度も何度も手記を読み直したり、破られた部分がないかを必死に探しました。ですが、どうしても見つからなくて…」


「マレディア侯爵、どうか僕に、他の手記も読ませていただけないでしょうか?もしかしたら、どこかに隠されているかもしれない」


「ええ、もちろんです。殿下の気が済む様になさってください」


「ありがとうございます」


 手記はすごい量だが、部屋自体はそこまで広くない。よし!


 早速僕は、他の手記も目を通し出した。ただ…全てを読むわけにはいかない。ネフェリアの父やその次の当主の手記を中心に読んでいく。


「手記には手掛かりはなさそうだな…」


 気が付くと日が沈み、夜も更けっていた。


「殿下、今日はこのくらいにして、また明日、部屋を調べては…」


 その時だった。ガタンという音が聞こえたのだ。びっくりして、音の方を振り返る。すると、ネリーヌの肖像画が壁から落ちていたのだ。


「びっくりした。肖像画が落ちてしまったのですね。ずっとこの場所に掛かっておりましたので、きっと劣化していたのでしょう」


 そう言って、マレディア侯爵が肖像画を手に取った時だった。

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