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全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています  作者: Karamimi


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第41話:どうして目を覚まさないのだ?~ワイアーム視点~

「セーラ、いつになったら目覚めてくれるのだい?もう3ヶ月も眠ったままだよ。いくらなんでも、長すぎる。おい、今すぐ医者を呼んでくれ、さすがに様子がおかしい」


 セーラの誕生日から、早3ヶ月。セーラは未だに目覚めていない。


 最初はすぐに目覚めるだろうと思っていた。でも、何日たっても目覚めないセーラに、僕の不安は日に日に募っていく。いてもたってもいられなくなり、医者を呼ぶ様に叫んだのだが…


「殿下、ここのところ毎日お医者様に見ていただきましたが、特に異常はないとの事です」


「異常がないのなら、どうして目覚めないのだい?おかしいだろう?もしこのままセーラが目覚めなかったら、僕は…」


「落ち着いて下さい、殿下。もしかしたら、マレディア侯爵家になら、セーラ様が目覚めるヒントなどが隠されているかもしれません。一度マレディア侯爵様に会いに行かれてはいかがですか?」


 マレディア侯爵家か…確かにあそこには、先代が残した数多くの手記が残されていると聞く。もしかしたら、まだ読み切れていない手記が残っているかもしれない。


「そうだな、今すぐマレディア侯爵家に、連絡を入れてくれ。今日の午後、侯爵家に向かうと」


「かしこまりました」


 執事が部屋から足早に出て行った。


 再びセーラを見つめる。


「セーラ、どうして目覚めないのだい?お願いだ、目覚めてくれ」


 セーラの手を握り、必死に訴えた。でも、セーラの瞼は閉じたまま。こんなにも長い期間、セーラが眠っているだなんて。もしこのまま、目覚めなかった僕は一体、どうすればいいのだろう。


 そして午後。

「セーラ、一緒にマレディア侯爵家に行こうね」


 セーラを抱きかかえ、馬車に乗り込んだ。


「またセーラ様を連れ出して!最近では公務の時にも、セーラ様を連れ出していらっしゃるではありませんか?セーラ様は意識がないのですよ。それなのに殿下は」


「僕はセーラの傍にいないと、力が発揮できないのだよ。それにセーラが傍にいてくれる様になってから、公務も随分スムーズに進んでいるのだから、文句はないだろう?」


「確かにセーラ様をお連れする様になってから、公務も非常に順調に進んでおりますが…それでもセーラ様の負担を考えると、私は心苦しいのです」


 執事の言う通り、セーラをベッドに寝かしておいた方が彼女の為なのだろう。でも僕は、どうしてもセーラと離れたくはないのだ。一度セーラを置いて公務に出掛けた時、セーラに会えない辛さと、もし僕がいない間に何かあったらどうしようという不安から、公務どころではなかった。


 僕はもう、セーラがいない生活なんて考えられないのだ。たとえ意識が戻らなくても、僕の傍にいて欲しい。僕の我が儘でしかない事は分かっている。それでも僕は、セーラに傍にいて欲しい。


 これが龍の血を色濃く受け継ぐ僕に愛された、セーラの宿命なのだろう。


「殿下、マレディア侯爵家に到着いたしましたよ。とにかく一度、セーラ様は彼女のお部屋に寝かさせていただきましょう」


「セーラは僕が抱いているから、大丈夫だよ。さあ、行こう」


 セーラを連れ、馬車から降りると


「殿下、よくお越しいただきました。セーラは相変わらず、目覚めてはないのですね…」


「「セーラ!!」」


「セーラちゃん」


 マレディア侯爵の近くにいた元夫人と、侯爵夫人が僕の方に駆け寄ってきた。久しぶりに見るセーラの姿に、涙を流している。


 あれ?もう1人女性がいるぞ。この人は確か…


「マレディア侯爵、元夫人、侯爵夫人、本日はお時間を頂き、ありがとうございます。キレイズ侯爵夫人も、わざわざ来ていただいたのですね」


「殿下、お久しぶりです。今日殿下がマレディア侯爵家にいらっしゃるとお伺いして、私に何か出来る事はないかと考え、足を運んだ次第です」


 彼女は確か、マレディア元侯爵の妹で、マレディア侯爵家の正当な血を引く人間だ。わざわざ来てくれたという事は…


「もしかして、海の神について、何かご存じなのですか?」


「はい、私も16歳の誕生日に、キース様と直接お話をいたしました。ただ、私はネリーヌの血をそこまで受け継いでおりませんでしたので、海に呼ばれることなく、自室で少し話して解放されましたが…その時、気になる話をしていたのを思い出しまして」


「何ですって?気になる事とは一体何ですか?」


「はい。キース様は、本当にネリーヌの事を愛していた様で…ネリーヌの血を色濃く受け継ぐ者は、16歳になると、必ず海に連れ戻すという事。そして…」


 いいにくそうに、僕の方を見るキレイズ侯爵夫人。


「“たとえ自分の元を去り、地上に戻っても、決して愛する人とは幸せにはなれない“そう言っていたのです。その時は深く考えておらず、すっかり忘れていたのですが…その…」


 眠るセーラを見つめ、言いにくそうに呟いたキレイズ侯爵夫人。


「要するに、セーラはもう、目覚めないかもしれないと言いたいのですか?僕はそんな言葉は、信じません。マレディア侯爵、今日伺ったのは、マレディア侯爵家の先祖が残した手記の中に、セーラが目覚める手がかりかなにかが書かれていないかを、調べるために来ました。確か1人だけ、地上に残った女性がいましたよね?」


「ええ、私もその様に伺っております。ですが、女性のその後は、記載されていなかったはずです」


「確かその後の記述は、破られていたとおっしゃっていましたよね?という事は、どこかにその破られた手記があるのではないかと、僕は考えているのです。お願いです、僕に調べさせてください」


 セーラが目覚めてくれる可能性があるのなら、僕は何だってしたい。そんな思いで頭を下げた。

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