表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/46

第40話:セーラのお陰で戻って来られた~ワイアーム視点~

「ワイアーム、起きなさい。ワイアーム!」


 誰かが僕を揺すっている。セーラか?僕の愛するセーラが、僕を起こそうとしているのか?


「セーラ?」


 ゆっくり瞼を上げると、そこには今にも泣きそうな顔の父上と、目を真っ赤にはらした母上の姿が。後ろには執事や護衛たちが、心配そうにこちらを見つめていた。


 あれ?僕、どうしたのだったかな?確かセーラがあの男に連れ去られて、それであの男と戦っていたのだが…あの男にやられて、それで…


「よかった、目が覚めたのね。本当によかったわ」


 ゆっくり体を起こすと、母上が抱き着いて来た。


「ここは?」


「ここは王都の海岸よ。あなたとセーラちゃんがここでいなくなったと聞いて、本当に心配したのよ」


 僕とセーラが、ここでいなくなった?という事は…


「セーラ!セーラはどこにいるのだ?セーラ」


 母上を押しのけ、セーラを必死に探す。すると…


「セーラ!」


 同じくマレディア侯爵と元夫人、侯爵夫人が意識のないセーラに必死に呼びかけていた。


「セーラ、なんて事だ!確かあの時…」


 確かの時、セーラは僕を抱きしめ、あの歌を歌っていた。きっとセーラが、僕たちを元の世界に戻してくれたのだ。


「セーラ、起きて。僕たち、地上に戻って来られたのだよ。君のお陰だ。ありがとう」


 ギュッとセーラを抱きしめた。


「セーラ、目を覚ましてくれ。もうあの男はいないよ。これからはあの男に怯えることなく、ずっと一緒にいられるよ。可哀そうに、砂だらけじゃないか。すぐに王宮に連れて行って、体を綺麗にしてあげないと」


 セーラを抱きかかえ、そのまま馬車へと乗り込んだ。まさかセーラに助けられるだなんて。


 とにかく、このまま海岸にいるのは良くない。もしかしてまた、あの男がやってくるかもしれない。そんな思いで、急いで王宮に戻った。


「殿下、あなた様も随分と龍の力を使ったのですよね。すぐに治療を…」


「僕の事はいいよ。それよりセーラだ」


「セーラ様は使用人たちが今、対応しております。とにかく治療を。随分と吐血したようですね。服が血だらけですよ」


 ふと服を見ると、確かに血が付いていた。あの時僕は、瀕死だったはずだ。でも、今は…


「僕は何ともないよ。きっとセーラが、僕を助けてくれたのだろう。セーラはネリーヌの血を、色濃く受け継いでいるのだろう?きっと治癒の力で、僕を治療してくれたんだ。そのせいで、セーラは…」


 意識を失ってしまっている。でもきっと、大丈夫だ。セーラは海から帰って来ると、必ず意識を失う。長いと1ヶ月近く失っていた時もあると聞く。だからきっと、今回も大丈夫だ。


 ただ…なぜだろう。この胸騒ぎは…


「確かに殿下の体は異常がないようですね…というよりも、完全に回復しておられます」


 いつの間にか治療にあたっていた医者が、驚いている。それほどセーラの力は、絶大だったのだろう。セーラのあの美しい歌声、温かく柔らかな光。まるで女神の様に美しかった。


 とにかく、早くセーラの元に向かわないと。


 僕も急いで湯あみを済ませ、セーラの元へと向かう。


「セーラ、お待たせ」


 そう声をかけたが、やはり意識はない様だ。それでも規則正しい寝息を立てるセーラを見ていると、愛おしくてたまらない。


 そっと彼女が眠るベッドに入り込んだ。


「セーラ、僕を助けてくれてありがとう。君のお陰で、地上に戻ってくることが出来たよ。きっと力を使って、疲れてしまったのだね。どうかしばらくは、ゆっくり休んで欲しい。僕はずっと、君の傍にいるからね」


 セーラを抱きしめ、おでこに口づけをした。そしてギュッと抱きしめる。温かくて柔らかい。


 セーラの温もりを感じているだけで、僕の心は満たされる。セーラの温もりは、僕に安らぎと癒しを与えてくれる。


「セーラ、君に触れていたら、なんだか眠くなってきたよ。今日はあの男のせいで、夜中にたたき起こされたからね。僕も少し休むよ」


 セーラの温もりが妙に気持ちよかったのと、あの男との戦いで疲れ切っていた僕は、そのまま眠りについたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ