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全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています  作者: Karamimi


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第35話:ワイアーム様に気持ちを伝えました

「セーラ、これが君の秘密だ。そして16歳になった時、ネリーヌの持っていた力が開花するかもしれない。生憎ネリーヌの血を色濃く受け継いだ女性のほとんどが、海に連れて行かれてしまったため、彼女たちの力がどんなものだったのかは記されていない」


「それでもね、セーラ。たった1人だけ、海に連れて行かれずこの地上に残った子がいたのですって。その子は心から愛する男性がいたらしいの。その為、キースに連れて行かれなかったらしいわ。ただ…その女性についての記載が全くなくて。彼女がその後、どんな風に生きたのかはわからないの」


 なるほど。だからさっき、私がワイアーム様を心から愛していれば、キース様に連れて行かれる事はないと言ったのね。それにしても、ただ1人以外は皆海に行ってしまっただなんて…


「セーラ、そんなに心配そうな顔をしなくてもいいわ。もしキースに海に引きずり込まれても、きっとワイアーム殿下が助けてくれるわ。あの人の執着は、恐ろしいから」


「母上、その様な軽率な発言は控えて下さい。万が一海の神とワイアーム殿下が、セーラをめぐって争いを始めたら…考えただけで、僕は頭が痛い。ワイアーム殿下は、陛下と王妃殿下の唯一の子供なのですよ。彼の身に何かあったが、僕はもう生きていけないよ」


 お兄様が頭を抱えてしまった。確かにワイアーム様の身に、何かあったら大変だ。


「お兄様、大丈夫ですわ。私がワイアーム様をお守りいたします。私にどんな力があるか分かりませんが、必ずワイアーム様を守って見せますわ。だって私は、海の神々を束ねる海神ネプチューンの娘、ネリーヌの血を色濃く受け継いでいるのですもの」


 私の住んでいる世界には、各地に海の神がいると言われている。その海の神をまとめている方こそ、ネプチューンなのだ。


「そうだね、セーラにどんな力が秘められているのか分からないけれど、きっと今のセーラなら大丈夫だろう。さあ、そろそろ30分経つ頃だ。セーラ、早く殿下の元に戻るといい。きっと君の事を、心配していると思うよ」


「そうですわね、そろそろ戻らないと。お兄様、お母様、今日はわざわざ来ていただいて、ありがとうございました」


 ペコリとお兄様とお母様に頭を下げた。


 そして部屋から出て行こうとした時だった。


 ノックの音と共に、ワイアーム様が部屋に入って来たのだ。


「マレディア侯爵、元夫人、こんにちは。そろそろ30分を過ぎた頃なので、セーラを迎えに来ました」


 穏やかな表情を作っているワイアーム様が、お兄様たちに挨拶を交わすと、そのまま私を引き寄せたのだ。


「ワイアーム殿下、今日はお時間を作って下さり、ありがとうございます。お陰で妹とゆっくり話をする事が出来ました」


「こちらこそ、わざわざ足を運んでくださり、ありがとうございました。セーラはなんと言ったか知りませんが、僕はセーラを手放すつもりはありません。たとえ海の神と戦う事になっても」


 私を抱き寄せる力が強くなる。必死に感情を抑えようとしているワイアーム様だが、感情が抑えきれていないのだろう。これはまずい。


「ワイアーム様、先ほど兄と母には伝えたのですが、私はワイアーム様から離れるつもりはありませんわ。私が愛しているのは、ワイアーム様ただ1人です。ですから、どうか心穏やかに。きっとキース様も、私の気持ちを分かって下さると思いますわ」


「セーラ、あの男の名前を口にしないでくれ!とにかく後1ヶ月、セーラは王宮で大人しくしているのだよ。分かったね」


「ええ、分かっておりますわ」


 よほどキース様の事が、気になるのだろう。まだ髪の毛が逆立っている。さすがに少し怖い。


「ワイアーム殿下、妹はあなた様の傍にずっといたいと願っております。私も母も、セーラが幸せになる事を望んでおります。どうかセーラの事を、よろしくお願いいたします。それでは、私共はこれで」


 お兄様とお母様が、ワイアーム様に向かって頭を下げ、部屋から出て行ったのだ。


「セーラ、僕たちも部屋に戻ろう。君も今日、話しを聞いたかと思うが、君を狙う海の神が、セーラを攫いにやってくるかもしれない。いいかい?お誕生日を無事過ごすまでは、絶対に僕から離れてはいけないよ。あの男は、神様だからね。あり得ない方法で、君を攫って来るかもしれない」


「ワイアーム様、きっと大丈夫ですわ。お兄様も話しておりましたが“愛する人がいる娘は攫って行かない”との事です。その…私はワイアーム様の事を、心から愛しておりますから…ですからきっと、大丈夫です」


 こんな風に面と向かって気持ちを伝えるのは、とても恥ずかしい。それによく考えたら、私から気持ちを伝えたことはなかった気がする。


「セーラ、それは本当かい?僕の心を落ち着かせるために、そう言っているのではないのかい?」


「いいえ、本心ですわ。あの事件があった後、ワイアーム様とこうやって王宮で過ごしているうちに、どんどんワイアーム様の事を知る事が出来ました。あなた様と過ごすうちに、ワイアーム様ともっと一緒にいたい、ワイアーム様が愛おしい、私の手で守りたいと思う様になったのです。その思いは、日に日に強くなっておりますわ。きっと私も、ワイアーム様が傍にいないと、もう生きていけないでしょう」


 その3ヶ月、ずっと傍にいた。私の知らないワイアーム様をたくさん知れた。一緒に過ごすうちに、どんどんワイアーム様に対する想いが大きくなっていく事に、戸惑いを覚える事もあった。


 それでも私は、ワイアーム様が大好きだ。


 真っすぐワイアーム様を見つめた。すると、美しいエメラルドグリーンの瞳から、涙がポロポロと溢れ出ている。


「ワイアーム様、私、何かまずい事でも…」


「すまない、まさかセーラが、僕の事をそんな風に思ってくれているとは思わなかったから。セーラは僕の体調を気遣い、自分の気持ちに蓋をして傍にいてくれていると思っていたから。でも、今日気持ちが知れて、よかったよ。セーラ、君には辛い思いも沢山させてしまって、すまなかった。これからは僕が、セーラを必ず幸せにするから」


 そう言ってほほ笑んだワイアーム様。その顔を見た瞬間、ワイアーム様のことが無性に愛おしくなり、思いっきり抱き着いた。


 こんなにもワイアーム様を、愛しているのですもの。きっとキース様に連れ去られる事はない。この時の私は、そう思っていたのだった。

次回、ワイアーム視点です。

よろしくお願いします。

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