表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/46

第34話:何も知らなかったのは私だけの様です

 訳が分からず、首をかしげる。


「実はね、既に殿下はご存じなのだよ」


 お兄様が言いにくそうに呟いたのだ。


「ワイアーム様は、この件を知っているのですか?一体どういうことですか?どうしてワイアーム様がご存じなのですか?」


「セーラ、落ち着いて。実はね、あなたとワイアーム殿下が一度目の婚約を結ぶとき、亡くなったあなたのお父様は、殿下とあなたの婚約を断ろうとしたの。16歳で海の神に連れて行かれるあなたを、あろう事か王太子殿下でもあるワイアーム殿下の婚約者にする事など、到底できないと考えたのよ。だから陛下や王妃殿下、ワイアーム殿下には全てを正直に話したの。でもね…」


 お母様がはぁっとため息をついたかと思うと、真っすぐ私を見つめた。


「“それでもどうしてもセーラと結婚したい。僕が海の神から絶対にセーラを守るから“と、殿下がおっしゃられて。その時初めて、殿下がセーラに執着している事を聞かされたのよ。


 陛下や王妃殿下からも”ワイアームは一度執着したら、死んでも手放さない龍の性質を色濃く受け継いでいる。もしこのまま、ワイアームとセーラ嬢を婚約させなければ、きっと侯爵を殺してでもセーラ嬢を手に入れるだろう。そんな事はしたくはない“と言われて。


 さすがのお父様も、これ以上は何も言えなかったようで…それであなた達の婚約が成立したの。ただ、あの人はずっと心配していたわ。もしセーラが、海の神に導かれて海の世界に行ってしまったら…海の神と龍の血を引く殿下の、命を懸けた戦いが始まるのではないかってね…」


「そんな、命を懸けた戦いだなんて、さすがに大げさではありませんか?」


「あら、あなた、龍の執着を甘く見てはいけないわ。かつて天界人に恋をした龍の子が、彼女を手に入れるため、天界に乗り込み大きな戦争になったという話を。それくらい龍の執着はすごいのよ」


 そう言ってお母様が笑っていた。


「そんな恐ろしい事を、さらりと言わないで下さい。とにかく私は、キース様の元にはいきませんからご安心を!」


「あら、私は海の神と龍の子孫の戦いを、見てみたかったわ。なんてね」


「母上、そんな恐ろしい事を、冗談でも言わないで下さい。セーラ、これが君が抱えていた秘密だ。君は海の神、キースが愛したネリーヌの血を色濃く受け継いでいる。それだけではなく、ネリーヌの肖像画と、セーラが瓜二つなんだ。血だけでなく見た目までもネリーヌにそっくりな君を、キースが簡単に諦めてくれるかどうか…とにかく、十分気を付けろよ」


「ネリーヌの肖像画なんて、我が家にありましたか?」


「ああ、代々マレディア侯爵のみ入る事が許されている部屋に、飾ってあるのだよ。父上が亡くなり、初めてあの部屋に入った時、びっくりしたよ。セーラの肖像画が飾られていたのだからね…それくらい、君とネリーヌは瓜二つなんだ」


 見た目までそっくりだなんて…でも、私が愛しているのは、ワイアーム様ただ1人だ。きっと大丈夫だろう。でも、既にワイアーム様まで、私の秘密を知っていらしただなんて…


「私がネリーヌの血を、色濃く受け継いでいる事は分かりました。どうしてその事を、もっと早く教えて下さらなかったのですか?こんなギリギリに話すだなんて。もしもっと早く知っていれば、色々と対策も取れたでしょうに」


 こんなギリギリに話をするだなんて、皆暢気すぎるのよ。


「私たちもね、何度もあなたに話しをしようとしたわ。でもね、どうやら16歳のお誕生日の1ヶ月前にならないと、話しが出来ないようなの。話そうとすると、勝手に口をつぐんでしまって…それからキースと過ごした記憶も、何らかの理由で消されていた様よ。その記憶も、どうやら秘密を話せるようになったタイミングで戻る様なの。本当に不思議よね」


 なんと!話したくても話せなかっただなんて…そんな事があるのね。私も何度もキース様と過ごしていたはずなのに、今まですっぽり記憶が消えて来たから、きっと本当なのだろう。


 まさか私に、そんな過去があっただなんて…


「とにかく、あなたのお誕生日まで、あと1ヶ月を切っているわ。十分気を付けるのよ。間違っても、海になんていってはいけないわ。それにあの歌を歌うのもダメよ」


 あの歌とは、いつも私がよく口ずさんでいた歌よね。


「どうして歌を歌うのはダメなのですか?」


「あの歌はね、昔ネリーヌが歌っていた歌なのですって。あの歌に引き寄せられる様に、キース様はやって来るそうよ。セーラがキースに連れて行かれたときは、いつもあの歌を歌っていたのではなくって?」


「確かに私、あの歌を歌っていましたわ。まさかそんな秘密があっただなんて…もしかしてその事も、ワイアーム様はご存じなのですか?」


「多分殿下は存じ上げていると思うわ。殿下は我がマレディア侯爵家、特にあなたに関する事は、徹底的に調べていた様だから」


 だからワイアーム様は、私があの歌を歌う事を嫌がったのね。


「あの、もしかしてあの歌には、何かの力が宿っているのですか?例えば、治癒の力とか?」


「さあ?そこまでは分からないわ。ただ、ネリーヌは治癒力に長けていたそうだから、もしかしたら治癒効果があるのかもしれないわね。ちなみにあの歌はね、ネリーヌの血を色濃く受け継ぐ者にしか歌えないそうよ。アナちゃんが何度歌おうとしても、声が出なくなってしまうのですって。私も試しにやってみたけれど、歌えなかったわ。きっと特別な歌なのね」


 ネリーヌは治癒力に長けていたか…なるほど、だからあの歌を歌った時、ワイアーム様の体が劇的によくなったのね。なんだか全てが繋がったわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ