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8.
婚約が破棄になったという情報が流れた途端、複数人から婚約希望が入ってきた。
そしてその中から親によって選ばれたのが実家は大金持ちで自身も実業家である青年であった。
最初、彼は、私をやたらとちやほやしてくれた。
しかし婚約してから少しすると急激に接し方が冷ややかなものになって。
「あんた、おもんないわ。婚約、破棄するわ」
やがてそんなことを告げられてしまった。
前回より可愛らしい容姿で生まれた気もするのだが……それでもやはり私には幸せな結婚はやって来ない。
「じゃねー。ばいばーい」
彼はあっさりと私を捨てたのだった。
だがその話を聞いて怒った父が「あいつの事業を駄目にしてやる!」と言ってそれを行動に移し、その結果、彼の事業は驚くほどの勢いで失速してゆくこととなった。
で、やがて彼は一文無しに。
今や彼の手もとにあるのは借金と絶望のみだ。
彼はこれからどうやって生きてゆくつもりだろう? ……いや、べつにそんなことはどうでもいい。彼のこれからなんて、私には何の関係もない。ただ少し、ふと、気になっただけである。