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次なる婚約者ニアは暴力男だった。
彼はことあるごとに婚約した私を蹴ろうとしたり殴ろうとしたりして。
しかしある時友人がそのことを私の父親へこっそり伝えてくれて、それによって、私と彼の婚約は破棄となった。
「ごめんなぁ! リリジーナ! 酷い目に、辛い目に、遭わせてしまって……ごめんなああああ!! 父さんは辛いぃぃぃぃ!! 娘を傷つけられて、父さんは悲しいぞおおぉぉぉぉぉぉ!!」
そんなニアだが、後に違法薬物の所持と使用によって逮捕され、強制労働刑に処されたそうだ。
もちろんその刑罰は一生続く。
つまり、もう、彼に普通に暮らす権利は一切ないということなのだ。
彼は自由を失った。普通に生きることさえもう叶わない。きっとそれはとても辛く虚しいことだろう。しかしそんな状況に自身を追い込んだのもまた彼自身。だからある意味自業自得なのである。はめられたわけでもないし。
そう、彼はもう永遠に一人だ。




