60.
アイニーティアとしての人生を衝動的に終わらせてしまった私だったが、幸い、死後罰を受けることはなかった。
あまりにも辛い。
その気持ちをこの世界の支配者は理解してくれたようだった。
そうして私はまた生まれる。
一人の金持ちの娘として……。
◆
「可愛いなぁリリジーナは」
次なる私、リリジーナは、先ほども話した通りお金持ちの一人娘。
「父の自慢の娘だぞお!」
リリジーナの父親は彼女を溺愛していた。
「かーわいいっ、かーわいいっ、カワイイカワイイカワイイカワイイぞぉっ!! んぁーっむぉーっ、かーわいいっかーわいいっかーわいいっ……カワイイカワイイ過ぎるぞぉーっ、リリジーナ神!!」
父親の愛情は少し不自然なほど過剰だった。
でも純粋な愛であることは確かだったから責める気にもならなかった。
愛されるというのは嬉しいこと。
◆
そんな私の一人目の婚約者は学生時代からファンがたくさんいたと聞く青年ロリーテオだった。
しかしロリーテオは私を愛しはしなかった。
「リリジーナ、お前のことなんて嫌いだ。お前と婚約したのはすべて金のため。お前なんてどうでもいい、お前なんて大嫌いだ。……それを忘れるな」
初対面でそんなことを言われた悲しさを私は忘れない。
そんな酷い振る舞いをしていたロリーテオだが、ある晩、学生時代からファンであった過激な女性に婚約したことを知られてしまい殺められてしまった。
ロリーテオはあの世へ旅立つこととなった。




