59-2.
それからの毎日は楽しさに満ちていた。
これまでとはまったく異なる世界。
視界が一段と明るくなったように感じる。
朝の匂い、空気さえも、愛おしい。
最初は魔法使いであるロックのことを疑っていた。胡散臭い、とか、信じられない、とか、そんな風に捉えてしまって。信じられるはずがないと思っていた。
でも今は彼を大切に思っている。
この心は確かに彼へ向いているのだ。
◆
ロックは死亡した。
海に行く約束をしていた日の朝、私は、昔からの知り合いである元神父のおじさんからその話を聞いた。
魔法使いゆえに処刑されてしまったのだそうだ。
この国にも過激な思想の人はいる。
魔法使いは魂が穢れた輩、そういった思想を持った者たちの暴走によって多くの魔法使いが合法的にではないが処刑されることとなって。
……そこにロックも含まれてしまっていたそうなのだ。
ようやく純粋に想えた彼を失って。
もう何も考えられなくなって。
だから私は死を選んだ。
こうしてアイニーティアは死亡する。
……でも、もう、良かったの。
もう生きていたくなんてなかったから。
愛する人を失うことには耐えられない。
しかもあんな理不尽な理由で他人に殺されるなんて辛すぎる。
だから自ら消えることを選んだ。




