54.
ジレット、チョーゼットから解放されたが、兄弟からはまだ解放されることはなかった。
というのも、三男サンジェスが寄ってきたのだ。
彼は国の権力者に金を積み、私と婚約できるように仕込んできた。で、私はそのまま彼と婚約させられることとなる。権力者が命じてきたこともあり、彼との婚約はほぼ強制であった。私には拒否する権利はなかった。
「君も本当はおらが好きなんじゃろ?」
「え……」
「このイケメンサンジェスと結婚できるんじゃ、嬉しかろ?」
「え、えっと……」
「照れ屋じゃのぉ! げはは! 可愛がってやるからのぉ? 安心せぇ」
サンジェスはアイニーティアが自分に惚れていると迷いなく信じていた。
だがそんなある日、彼は、私が「サンジェスを愛してはいない」と話しているところを目撃。
激昂し、刃物を手に襲いかかってくる。
「裏切り者はああぁぁぁぁ、死ぬべきなんじゃああぁぁぁぁぁぁ!!」
けれども運命という神は私に味方した。
突如彼の頭頂部に雷が落ちたのだ。
それによりサンジェスはこの世を去った。
焦げたパンのような彼を見下ろす。




