50.
王子ラルフローレンの死によって、彼との婚約は破棄となった。
それからは暫し聖なる乙女としての仕事に集中していた。
でもそれでいいのだ。
やるべきことをやるだけで。
恋も、愛も、私には必要ない。
叶わない夢はみたくない。
「聖女さま! 素晴らしいお方!」
「尊敬しています!」
「女神のようなお方! 敬愛を向けております! どこまでも素晴らしい、歓喜を絵に描いたようなお方!」
人のために生きる。
それを最優先事項としたい。
◆
アイニーティアの二人目の婚約者は十九年上の男性であった。
彼はお金持ち。
しかし若干いたずらが多く厄介な人物だった。
彼はアイニーティアに対してでも容赦なくいたずらしてくる。スカートをめくってパンツを見ようとしたり、急に下ネタを言い放ってきたり、カップの水をいきなりかけてきたり。
だが、そんな彼も、長くは生きられなかった。
彼はある夜突如倒れた。
心臓発作みたいな状態に陥っていたのだった。
そうして彼は死んだ。
それによって彼との婚約も破棄となったのだった。
今回は相手の死による婚約破棄パターンが多いなぁ、なんて思いつつ……今日も息をして、生きる。




