49.
やがてフローリニアも死んだ。
不幸な死ではなかったからまだ幸運な方だったけれど。
そしてまた、新たな生を得ることとなる。
ある王国の聖なる乙女アイニーティアとして。
◆
アイニーティアは幼い頃にその才能を見出され聖なる乙女となった。
聖なる乙女というのは、この国においてはかなり地位の高い女性である。
それゆえ、それになった者は、女性でありながら大変丁寧に扱われる。
私、アイニーティアも、そうだった。
そんなアイニーティアは十八の春に王子ラルフローレンと婚約。
……だが幸せにはなれなかった。
遊び人で毎晩異なる女性を自室へ連れ込むラルフローレンがアイニーティアを純粋に愛するはずもなく。彼は婚約後もずっと複数の女性を愛していて。しかもアイニーティアのことはほぼほぼ無視であった。
そんなある日、ラルフローレンに天罰が下る。
女性二人とお楽しみ中だったラルフローレンの頭に棚の上の花瓶が落ちたのだ。
なぜそんなことになったのかは不明。
ただ、ラルフローレンはそれによって頭がかち割れることとなってしまい、一週間も経たないうちに死亡した。
「ラルフローレン様、亡くなられるなんてねぇ」
「嘘みたいな話だわ」
「アイニーティア様を放置していたみたいだから……それで、天罰が下ったのね」
城内はその話で持ち切り。
「ま、あいつクズ男だったしね~」
「ほーんとそれよね」
「ないわー。いくら王子でも呆れる。サイテーすぎる」
「酷いわよねぇ」
「心ない男すぎるでしょ、さすがに」
「あり得ないわ」




