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4.

 新しい年が来た。

 一年の始まりとは良いものだ、心の奥まで澄むような感覚があって。


 けれどその年だけは違っていた。


「新しい年、おめでとう。……そして、君との婚約は本日をもって破棄とする」


 庭の草刈りを仕事としている婚約者の彼とは仲良く過ごせていたのだが、先日些細なことで言い合いになってしまい、それ以来ずっと気まずい状態が続いていた。


 そしてやはりまたこうなってしまった。


「新年早々で悪いとは思う。が、男様に口答えするような女とはやっていけない」


 口答えするような女?

 私が男性に口答えするような女だから婚約破棄されるの?


 ……そもそも喧嘩を売ってきたのは向こうではないか。


 なのにどうして私に非があるかのような言われ方をしなくてはならないのか、謎である。


「婚約破棄って……本気なのですか?」

「当たり前だろう、そんな面白さの欠片もない冗談はさすがに言わない」


 でももう動じない。

 婚約破棄なら婚約破棄で、それでいい。


 もう慣れたのだ、理不尽に捨てられることに。


 悲しみも苦しみも今は感じない。感じることは、ああまたか、ただそれだけ。それ以上でもそれ以下でもない。もはや私の心は川の水に押し流されているような状態、そこに感情の居場所はない。


「分かりました。……では、さようなら」


 それから数日して、彼は私のところへやって来た。

 そして「やはり婚約破棄はなかったことにしたい」なんてことを言ってくる。


 だが私はそれを拒否。


 当たり前だろう。

 向こうが一方的に関係を終わらせたのだから、彼にはやり直したいなんて言う権利はないのだ。


 それから少しして、彼はこの世を去った。


 スキーのために雪山に赴いていて事故に巻き込まれ亡くなった、という話みたいだ。

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