47.
「な! フローリニア! 俺たち、仲良しだよなっ!」
今回の婚約者ルッツはやたらと距離感の近い人物だ。
さほど親しくないのに不自然なほど近づいてくる。
さすがに気味が悪いと思ってしまうほど。
でも、それだけなのなら、まだいいのだが……。
「な? 仲良しだよな?」
「……え、ゃ、えっと」
「おいいいい!! 何だその態度ぉぉぉぉ!! ふっざけんなああああ!!」
少しでも反対の意思が垣間見えると急に怒り出すのだ。
「え、え……え……?」
「おいごらあああぁぁぁぁぁ!! 仲良しだろぉがぁぁぁぁ!! 違うって言ってんのか? 言ってんのか? おいごらあああぁぁぁぁぁ!!」
そういうところが特に厄介だ。
もう鬱陶しすぎる。
いちいち絡んでくるのが非常に面倒臭い。
◆
婚約から三ヶ月、ルッツは亡くなった。
惚れた女性に拒否されて怒りが爆発した際、その女性を亡き者にしようと崖の方へと追い込んだようなのだが、うっかり足を滑らせて彼が崖から落ちてしまったのである。
彼はこの世界から完全に消滅した。
そしてもちろん、婚約は自動的に破棄となったのだった。
私は厄介な男から解放された!
それはとても嬉しいこと。
涙が出そうなほどに。
踊りたくなる、歌いたくなる、それほどに。




