40.
「君は本当に無能だね」
婚約者ロードの口癖はそれだった。
彼はいつも私のことを馬鹿にしていた。
「君ってさ、名前からして愚かそうだよね」
ある時はそんなことを言われたうえくすくすと笑われてしまい。
「どうして君は愚かなのだろうね? ま、生まれかな。そう生まれついて、また、それな親のもとで育ったのだろうね」
ある時は無関係な親のことまで貶められ。
「ああ、君と婚約したことを後悔しているよ」
また別のある時にはそんな基礎から叩き壊すような発言をされてしまった。
だが、そんな感じの悪い彼は、ある日突然私の前から消えることとなった。
仕事中に働いていた建物の謎の崩壊が発生。
逃げ遅れた彼はそのままあの世逝きとなってしまった。
そして婚約は破棄となる。
建物の倒壊に巻き込まれる、というのは本来悲劇である。
大きな建造物が崩壊なんてした日には人は無力。
どう足掻こうともそれに抵抗するのはかなり難しい。
だから悲劇なのだ。
ただ、ロードはこれまで見ていて行いが行いだったので、理不尽な死を遂げてもなお悲劇だとも可哀想だとも思えなかった。




