39.
「リタ! お前さ、ダサすぎるぜ! てことで、婚約は破棄な!」
ブロンドの長髪が個性的な婚約者ルーベレットはある日突然そんなことを言ってきた。
彼は音楽活動をしている。しかし個性が強すぎてあまり人気はない。特に、鼻の穴から上唇に向けて棒が刺さっているところなどは、社会でも定期的に批判されているほどだ。音楽活動自体には一応まともに取り組んではいるようなのだが、その異端な個性系外見のせいでまったく評価されていない。もっとも、かなりの音痴というのもあるのだろうが。ファンなど皆無である。
「婚約破棄? またどうして」
「お前、鼻と口に棒を刺すのやらないだろ? それが無理だなーって。俺がイイって言ってんだから婚約者なら本来はそれに従うべきだろ」
「えええー……」
「なのにそれをしないってことは、婚約者でいる気はないってことだろうが」
「いやべつにそういうわけでは……」
「そうなんだよ! 俺がそうだって言えばそうなんだ。お前が何を言おうとも、な! 分かるだろ! この世は俺のもの、秩序とは俺、なんだよ!」
こうしてルーベレットの関係は終わった。
そんなルーベレットはというと、とあるライブにて通行人に「俺のファンなんだろ! そうだよな!? 違うと言ったら今日は帰さねぇ! ずっとここで聴いてもらう、ファンになったって言うまで!」などと言って辛み、それによって逮捕されたそうだ。
今は刑務所にて皆に虐められながら暮らしているらしい。




