37.
「お前さぁ、可愛いけど刺激がなさすぎるよなぁ」
婚約者ルマンドはいちいち不快感を掻き立てるような人物だ。
とにかく性格が良くない。
ことあるごとに失礼なことを言ってくるところも悪印象。
そんな彼だが。
「てことで、婚約は破棄な!」
ある日突然関係の終わりを告げてきて。
「じゃあな、ばいばぁ~い」
私の意見など欠片ほども聞かず、婚約者同士であるという関係を一方的に無理矢理叩き壊したのだった。
そんなルマンドだが、婚約破棄後間もなくこの世を去ることとなる。
暇潰しか何か知らないがあれからずっと路上で女性に声をかけることを繰り返していたそうなのだが、通報され、警備隊員に取り囲まれて。その時パニックになってしまった彼は逃走した果てに近くの井戸に飛び込み、頭を打って亡くなったそうである。
あまりにも呆気ない最期であった。
彼が亡くなったその日は快晴。
見上げた空は青く澄んでいて。
浮かぶ白い雲がまるで絵画であるかのようで。
人が一人亡くなってもなんだかんだで世界は変わらないのだなぁ、なんて思ったりした。
だってルマンドは亡くなったのに。
それでも世界は変わらず美しいのだから。




