34.
「今は魚屋をしている人と婚約しているの」
フィリーナの婚約回数が凄まじいことになりつつある。そしてそれは婚約破棄回数の増加とも同義。もはやフィリーナはとんでもない女になってきている。いろんな意味で常識はずれである。
でもこれは私の運命……。
だから決して逃れられはしない……。
「へー、あのやばいのの次の人か!」
「そうなの」
「てかさ、フィリーナの婚約と婚約破棄の回数記録すごない?」
「うん……。増えて増えてで、いつの間にか、とんでもないことに……」
「あはは! でもそれでこそフィリーナって感じもする!」
何度関係が終わっても、それでも私は普通に生きてゆくしかない。
だってどんなことがあっても明日はやって来るんだもの。
「でもね、彼、私のことあまり好きじゃないみたいで」
「うっそ!」
「魚が好きなんだって」
「え!? ちょ、そっち!? あはははは! なるほど、そっちかぁ!!」
エリザベスは今もこんな私と一緒にいてくれる。
だから彼女は大切な存在だ。
夏の日射しのようにカラッとした性格の彼女は一番の宝物。
「心配しないで! 何回婚約破棄されても、フィリーナのことずっと好きだよ!」
◆
あの後、魚屋を営む彼からは、やはり婚約破棄を告げられてしまった。
理由は魚でないからというものであった。
「ごめん、人を愛せなくて」
「いえ……大丈夫です、お気遣いなく……」
その後彼は漁に出ている最中にぎっくり腰になりその衝撃で船から海へと転落しそのまま落命してしまったそうだ。
そんな彼の最期の言葉は「魚よ、永久に……」だったそうな。




