28.
「フィリーナさん、愛しています」
何人目かの婚約者である男性リットウェンクは本屋に勤めていて本と読書をこよなく愛する真面目な人物であった。
「恥ずかしいですが……言いますよ、好きだと、愛していると。なぜなら、想いとは言わなければ伝わらないものだからです。フィリーナさんのことが大好きです」
彼はいつも誠実で。
迷うことなく私だけを見つめてくれていた。
◆
婚約から数ヶ月。
彼の職場に現れた女ミミに惚れてしまったリットウェンクは、段々私に対して冷ややかな態度を取るようになっていって。
そして……。
「ごめん、僕、ミミさんと結婚するから」
「え」
「だからフィリーナとの婚約は破棄とするよ」
「ほ、本気!?」
「もちろん。嘘はつかない。僕は本当のことしか言わないよ。……そんなジョーク、面白くないしね?」
やがて訪れてしまう、別れの時。
「じゃあね、フィリーナ。さよなら。今までありがとう」
こうして私はまた捨てられる。
◆
あれから少ししてリットウェンクは亡くなった。
ミミをデートに誘い、待ち合わせ場所で想いを伝えようと花束を抱えてそこへ向かっていたそうなのだが、その途中の道で馬車にはねられてしまったのであった。
現場には、散った無数の花が落ちていたそうだ。




