24.
それからも私エリーミネは男性と婚約することを求められ続けた、のだが。
「こちらのアップルパイ、美味ですわ」
「初めて作りました!」
「まぁ! 初めて。それは素晴らしいことですわね……! 才能が溢れていますわね」
「気に入ってもらえたみたいでとても嬉しいです」
私はもう二度と異性には心を開かないと決めた。
だから迷いなんてもう欠片ほどもない。
誰かと婚約して結婚すること、異性である誰かと共に生きること、それが人の生涯のすべてではない。
生き方なんて他にもいくらでもあるのだ。
何をして生きるかなんて、どんな風にどんな人と関わって生きていくかなんて、結局最後は自分の選択。
「誘ってくれてありがとね!」
「初めてだった……わよね」
「うん! ありがと! 誘ってもらえて嬉しかったなっ」
「なら良かったわ。じゃあ早速……」
「あ! そうだ! お菓子持ってきたんだっ。良かったらこれ! 食べよ? ねっ?」
「良い案ね。ありがとう、じゃあいただくわね。一緒に食べましょう」
だから私は私のために生きていく。
楽しさと嬉しさを抱えて歩めるように生きるのだ。
そのために婚約が破棄となってしまうとしても……。
それでも構わない。
ちなみにその時の婚約者とは会うことはないまま別れることとなったのだが、彼は私と別れた後他の女性と婚約したそうだ。しかしその女性は非常にわがままな娘であったようで、婚約後も彼は振り回されることとなってしまったようである。
ま、まぁ、頑張って……。
もっとも私にはその程度しか思うことはなかったのだけれど。




