22.
もう薄々気づいてはいたのだが……やはり予想通り、今度はヒポルクス家の三男であるペロ・ヒポルクスと婚約することになってしまった。
もういいよ、ヒポルクス家は。
何回もそう思った。
でもこの運命からは逃れられなかった。
その日、私は、ペロに「応じなければ君の家に爆弾を仕掛けるからね」と脅されたためしぶしぶ郊外の森へ向かった。
「来てくれたんだ」
「脅しておいてそのようなことを言うのですね」
「来ないかと思っていたからさ」
「ええっ……」
「君、意外と家のことは大事に思ってるんだね。意外だったよ。どうでもいい、って言って、応じないかと思ってた」
そしてそこで。
「結婚したら、君の家の資産は全部僕に譲ること。いいね?」
「え……いやいや、それは、おかしいでしょう」
「おかしい? そうかな? 別にそんなことはないと思うんだけど。だって、結婚だよ? 結婚したなら、女は男に資産を渡すのが通例じゃないか」
えええー……。
何その意味不明理論……。
「それは約束してもらう」
「無理ですよそんなの……!」
「は? じゃあ実家爆破するけど?」
「……また脅しですか」
「脅しじゃない、本気だよ」
やはりこの人はどうかしている。
そうとしか思えない。
「ま、とにかくそういうことだから、改めて親御さんにも言っておい」
そこまで発した、刹那。
「ぎゃああああああああ!!」
茂みから突然現れた一頭の熊に襲いかかられるペロ。
彼はそのまま熊の餌となってしまったのだった。




