20.
ヒポルクス家の長男タロ・ヒポルクスと婚約することとなった。
彼は最初から「お前には魅力は感じていない、俺の求めているものはお前の親の金だけだ」と公言しているような人だった。
そんな彼との婚約後も、私は同性とお茶をして過ごすことを続けた。
「エリーミネ、今日も誘ってくれてありがとうねぇ」
「新しい茶葉が手に入ったから」
「あら、それで誘ってくれたの?」
「そうなの。やっぱり貴女と一番に味わいたいなって思って」
「んもーっ、カワイイッ!!」
婚約破棄になると分かっているのにいちいち関わることに面倒臭さを感じるようになってしまったからである。
あれから私は私の道を行くことにした。
そうすればもう痛みも苦しみも味わう必要はない。
「エリたん! これ美味過ぎてサイコー!」
「気に入ってもらえた?」
「ありあり! マジ神クオリティでテンション一気に上がってるー!」
「それは良かった」
私は私がやりたいことをやる。
そうやって生きることこそが最も理想的な人生の形だろう。
「エリーミネさま、本日もお誘いいただきありがとう。とても嬉しいですわ。わたくし、エリーミネさまとのティータイムはとても好きですの」
「本当ですか……! それは嬉しいです、ありがとうございます。私も貴女とお茶をできることが嬉しいです」
「ありがとう。それは実に喜ばしいお言葉ですわね」
そんな風にしているうちにヒポルクス家の長男タロから婚約破棄宣言が届いた。
そうして彼との婚約は破棄となったのであった。
ちなみにタロはというと、婚約破棄の後少しして急に亡くなった。複数いた恋人のうちの一人に毒を盛られたことが原因ではないか、と言われているようだ。




