17.
「俺たちさ、婚約しね?」
それはある快晴の日のことであった。
ここのところ仲良くしている同年代の男性アルクから急にそんなことを言われた。
「え? こ、婚約……?」
いきなりだったので困惑。
普通なら嬉しいところだろうが私の運命を想えば未来が見えていまいち盛り上がれない。
「そうそう。だってもう何回もお茶してる仲だしさ。それに、結構仲良しな感じだろ? そろそろ一回言ってみよっかなーって」
「そういうのは、ちょっと……」
「何でだ?」
「私、婚約しても婚約破棄される運命なの」
思いきって本当のことを言えば、アルクは首を傾げる。
「たまたまだろ? そんなの」
その言葉に救われる私もいて。
でも、運命は運命でどう足掻こうとも避けられない、そう言い返したくなるようなところもあって。
「……分かったわ」
「婚約してくれるんだな!」
「ええ」
「よっし! じゃ、決まりな! 後からやっぱやめるとかなしな」
「もちろんよ」
……そう、きっと、未来でやめると言い出すのは私ではない。
◆
「ごめん。婚約だけど、破棄するわ」
やはりその時は訪れた。
「アルク……。やっぱり、どうしてもこうなってしまうのね」
「ほんとごめんな。けどもっと条件の良い女の子に出会っちまったんだ。そしたらあんたがくすんで見えてさ」
「まぁいいわ、分かっていたことだもの」
「そんなこと言うなよ! あんただってきっと良い人に巡り会えるから。だから大丈夫! 前向いて生きてくれよな」
こうして私は乗り換えるために捨てられたのだった。
ちなみにアルクと彼と婚約した女性だが、二人は結婚前に旅行に出ていて裏社会の組織の者たちの戦いに巻き込まれてしまって亡くなったそうだ。