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14.
魔族の血を引いていた彼との関係が終わって少しした頃に遠い親戚の人の紹介で婚約したのはマザコン男だった。
「ママがさぁ、フォリアナのこと、あまり好きじゃないんだって」
「またママの話?」
「うん。前一回会った時ママのこと睨んだんでしょ? ママ傷ついてたよ。仲良くしようと思っていたのに、って」
いやいやいや! それはおかしい! ……本当のことを言うなら、睨んだのは向こうだ。私が彼の母親を睨んだのではなく、彼の母親が私を睨んできたのだ。これは絶対的なこと。それにそもそも、私が彼の母親を睨む理由なんてないだろう! 冷静になって考えてみてほしい、そんなことをする意味があるかどうか。
「だからフォリアナとの婚約は破棄するね」
こうしてまた訪れる婚約破棄の日。
でももはやよくあること過ぎて少しも傷つかない。
あの後、少しして、彼と彼の母親は彼の父親の暴力によって亡くなったそうだ。
何でも彼の家族には色々問題があったようだ。
そういう事情もあってマザコンに育ったのかも……しれ、ない。
もっとも、それが良いことなのかどうかは定かではないが。