仕立て屋バルザ
こいつ、今まで遭遇した(殺した)やつとは異色だよなぁと目で聞いてくるのだけれど残念なことに僕と君は出会ってまだ数日しか経ってないんだよ?でもまぁ少し個性が強いかなとは思う。
一応リオンは体格が良くて身長も高い。けど目の前にいるのは身長は高く華奢で綺麗系な男性である。多分、男性である。
「仕立て屋、さんですか」
「こんな奴がか?」
「ちょっと初対面の相手に向かっていかにも違うだろって顔しないでくれるかしら?!こう見えてもデザイナーで仕立て屋一歩手前よ!!」
「オカマとかいうやつか」
失礼すぎでしょとキーキー鳴く彼。女性的、とまでは行かないがばっちり化粧もされて服もおしゃれなものを着ている。靴に至ってはそれは道の悪いところを歩けるのかと聞きたくなる細く高いヒール。
「服以外にも何か作れたりするんですか?」
「あらこっちの子はいい子じゃない。その前に自己紹介をしましょう。あたしはトゥーリ・バルザリッサ、あなたたちは?」
自分でもいうけれどこんな見た目個性の強い相手に声をかけるなんて変わってるじゃないと不思議がる。そもそも何やら言い争いをしていたところに遭遇し怪我をしていないかと声をかけただけなのだ。
「えっと、僕はソアレ・レーヴェン。彼はリオン・アーデルベルト」
「そ、あたしのことはバルザちゃんでいいわよソアレちゃん」
さっきの質問に答えないといけないわねと腕を組み
「服は手元を見なくても作れるわよ。魔法道具があれば靴もできるんだけどちょっと手持ちがなくて」
「装飾スキルを持ってるの?」
「もちろん。え、何よその期待の眼差し」
「魔法道具ってどんなものが欲しいとかある?!」
市場に魔法道具専門店があったような気がすると飛び出そうとした僕の手をしっかりと掴んだバルザ。
「ちょっと待ちなさい!!まずちゃんとあたしにわかるようにお話ししてくれるかしら!?」
市場を回りながら納得するバルザ。
「なるほどね。確かに靴はかわいそうな見た目をしているわ。そしてあんたよリオン」
「あ?」
「その体格をもっと活かすための服があるでしょうが!」
「興味ねぇ知らねぇ」
後で何やら言い合いをしている長身二人を横目に色のついた糸を眺める。強度についても詳しく書かれており魔法付与をして防具にしたりするらしい。
「この針って魔法針とは違うの?」
「魔法針に攻撃魔法を付与したものなの。純正の魔法針はなかなかお目にかかれないのよ」
店員との会話であれは珍しいものだったかと思いつつ買い物をする。布も買って
「バルザは魔導書を持ってないの?」
「持ってるけど手を滑らせて魔導書の半分を燃やしちゃったのよ。少し味のある魔法紙で修復しようと思ってるんだけどなかなか見つからなくて」
魔導書から引っ張り出した白ではないおそらく彼が求めているであろう紙を出せば黄色い悲鳴をあげた。
「これ買わせて頂戴!」
「どうぞ」
「魔導書って燃えるんだな」
「開いている時は危ないかな」
修復された魔導書。魔導書を持っているのならこれもあげようと買った布とかを魔導書から引っ張り出す。
「バルザ、僕裁縫とかスキルとか持ってないからこれ君にあげるよ。魔法針も持っているから」
その代わりと言ってはなんだが服を数セット作って欲しいといえば魔法針セットを手に静かに喜びを噛み締めているバルザがいた。
●
黄色い悲鳴をあげるバルザ。彼が作った服を着てちょっとしたファッションショーのようなことが起きていた。
「いいわよ!かわいいわ!」
「動きやすい・・・」
「そりゃそうよ。誰にだって自分の大きさがあるわ。一般的に売られているのは万人受けするものだもの。それと頼まれていたものも出来上がってるわよ。まさか魔導人形の眼球パーツを作ってくれなんて言われるなんて思ってなかったわ」
魔石と宝石を組み合わせて出来上がった眼球パーツ。綺麗だなぁとテーブルの上に並べて見つめるソアレに素直な子ねと長い足を組む。
「それはそうとソアレちゃん、あたしも王都までついていっていいかしら?」
「構わないけど僕に合わせていると遅くなるかも」
「いいのよいいの!楽しそうだもの!」
まぁ彼がそういうのならいいか。
「あ、あー・・・・えっと、僕は今日の夜少し出かけてくるのでバルザは僕のベッドを使ってください。リオンも外に出るのはいいけど無闇にあの鎌を出さないでね」
「夜?どこ行くんだ?」
「知り合いから仕事。危険な魔法を使用する人の討伐依頼」
俺も行く!という声と共にいいだろうと至近距離にあったリオンの顔に驚く。
「・・・・ものを壊さない。相手を逃さない、できれば生け捕り」
「なんとかする!」
「便乗していっちゃおうかしら。装飾品の素材集めに少しは戦闘慣れしたいしね」
その前に戦闘向けの服を作るから待ってなさい!と慌てるバルザ。器用な人はやることが早いなと思いながらその手捌きを眺める。