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輝く世界を旅して  作者: 藍川秋馬
王都までの道のり
3/13

旅に出る


 ゴーレムを連れて森の中を歩く。ちなみにこの森で採掘できるのは風と水と草とたまに火の属性を持つ魔水晶。掘れば大地属性のものも採掘できるんじゃないかと思うが地中深く掘らないといけないのならそれは少し拒否したいところである。


「確かここに無色透明の結晶体があったような気がするけど」


 光の当たらない洞窟最深部。モンスターが出ても対応できそうにないからと近づかなかったのだがゴーレムがいるから大丈夫だろう。多分。


「うーん、想像以上に突き出てるぞ〜。これ引っこ抜けるかな。できそう?」


 ゴーレムに視線を向けると石柱を両手で掴み上へと引っこ抜こうとする。根本を掘ればどうにかなるだろうかと手を出そうとした次の瞬間ゆっくりと引き抜かれて行く。


「待って、長くない?こんなもの?魔導書にこれ入るのかな・・・・入った・・・」


 しかもページの一行目に入った。あの大きさなら一ページ使ってもいいんじゃないのかと思うほどだが入るのなら入れてしまえ。入るだけ入れてしまえと太く長い石柱を五本ほどもらって帰る。この無属性の魔水晶は騎士団昇格テストや入団試験に使用するものらしく一般的にも使われたりする。なんでも生まれ持ってみんなが持っている魔力の属性を調べるものらしく両手で包めるほどの球体に加工される。必要不可欠なのでこれはかなりの小遣い稼ぎになるのではないかと思う。


「あとはうまく加工ができたらいいんだけど」


 持ち帰った石柱をどうにかこうにか切り分けて集中して形を整える。一日で全部加工できる量じゃないぞとなんとか四日かけてまんまるな球体状に仕上げた。


 ガレスおじさんが来るのはあと二日経ってから。その間に色々とやれることはやっておこうと追加で魔水晶を採掘しに出かける。球体状には加工ができるからと採掘、加工、採掘、加工と続けていけばおじさんが来るまでには少しは上達した。五回に一度失敗するだけになったのでかなりの成長だろう。


 偶然手に入った魔力の質レベルが四以上の火の魔水晶も魔石にしたしと上機嫌だった僕はあるものを見つけてしまった。まだこの大陸には程遠いはずの存在が目の前に落ちていたのだ。


 黒の瘴気と呼ばれる呪いに侵された小鳥。意識はあるはずなのに体が勝手に動き意思とは別の行動に出てしまう凶暴な存在。自ら命を断ちたくなるような絶望を与えられるも死ねないという呪いがかかった状態とは聞いている。


 おじさんと話をした呪縛された生き物の姿。解き放つ方法はいくつもあるのだが今思いついたのはこれしかなかった。


 手にした火の魔水晶に自らの魔力を流しこみその魔石が持っている力を解放させながらその体を蝕む呪縛の鎖を破壊する。ただしこれは魔力に当てられすぎて別のものに変わってしまうというデメリットが発生するのだ。


 燃え盛る炎は小鳥を包み込みその呪縛の鎖を焼き切ろうと暴れる。目の前で引きちぎれた鎖を合図に炎は消え去りそこに立っているのは炎の鳥。





 やってきたガレスは簡易的な作業台の上に立つ小鳥サイズの炎の鳥に目を疑った。


「これ、どうしたんだ?!」


 お茶を淹れるからと席を外していたソアレは事情を軽く説明。呪縛を解き放つためにそうするしか手段がなかったのだと肩を竦めた。


「呪縛、この大地にまできたか」

「持ってた火の魔石を使ったから属性が火になったんだ」


 火の属性かつレベルの高い魔石を使ったおかげで魔力量はかなりある。たまに加工中に魔力を分けてもらったりするのでありがたい。しかもサイズ変更が簡単にできるそうで背中に乗れるほどの大きさまでは試した。ちなみに魔力を分け合った相手にはその炎の殺傷能力は影響しないため魔力の痕跡が少しでもあるものを乗せても燃える心配はないのだ。


「この子と王都を目指そうと思うんだ。すぐには到着はしないだろうし途中の街を見てみたいし。あわよくばまだ採掘したことのない魔水晶を採掘したい」

「後者が本音だろう?魔導書も持っている、武器もある。その鳥もいるとなれば問題はなさそうだな」

「お金もあるし!魔石も今日持って帰ってもらって」


 木箱に大量に入った魔石。どれだけ加工したんだと逆に引くレベルだと笑うガレスおじさん。


「ここを出て最初にある街はあまり治安が良くない。長居しないことだな」

「はーい」

「ま、念のために鏡石で加工したお守りを作ってもらったから持っておくといい」


 ぱっと見はただの鏡。ただそれに含まれる魔力は少し高めである。立派な魔道具の一つである。これの使い方はまた今度説明するとして魔導書のマップページにこの場所を登録する。転移門があればここまで一瞬で移動できるのだ。


「出発はどうする?」

「魔石が要らないのなら明日にでも」

「これだけあれば足りるだろう。報酬金はこっちになるが・・・全部一枚でかなりの額になる。もっと小さくしたほうがいいな」


 小袋の中の金色のコイン。コインの色は全部で四種類、金が一枚で十万、銀が一枚で一万、銅が千、そして銅とその他物質が混ざったものが混ざり具合によって百単位で変化する。


 主食として食べているパンは店によって値段が変わるが平均で五百円ほど(三斤分)。


「使う分だけ小袋に入れておこう・・・」

「あと靴や服も早めに買い替えたほうがいい。洞窟とかに入るせいか泥だらけだぞ」

「あったら買うよ。次会うのは王都かな?」

「そうなるな。気をつけてくるんだぞ」


 こうして僕は物心がついた時から過ごしていた家を離れ王都に行くため旅を始めるのだった。


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