魔導人形
王都といえど暗い路地裏にはガラの悪い奴らはいて数人の男が座り込む女性を取り囲んでいたが突如一人が吹っ飛んだ。
「なんっだ!?テメェ!!!」
「クソガキ!何しやがる!!」
「何って、僕、魔導人形にそんなひどいことしてるの許せないんだよね。その子、顔にひびが入ってるじゃん」
座り込んだ魔導人形は足の接続金属が破壊され膝から下が砕かれていた。顔にも殴られたのかヒビが入り目玉も片方はポッカリと空洞が開いていた。
「あ?魔導人形にひどいこと?作り直せばいいだろ?ストレス発散の道具にちょうど」
男の視界の端に見えたのは切っ先。眼前で止まったそれに腰が抜け膝が笑う。
「直せばいい。確かにそれは正論だよ」
短剣が泥状に変化する。それが男の足を包み込み勢いよく真上に投げ飛ばす。
「僕が君たちを許せないんだ。僕のストレス発散の道具になってくれないかな」
「な、なんだそれ!おいお前ら!!」
相手は子供、こっちの方が人数が多いのだからやってしまえと抵抗してくる。
「あらごめんなさい。あたし、可愛い子にヒビがあるの許せないのよ」
真上から降ってきた巨大なハサミ。その持ち手に座って足を組むバルザの登場に新手がきたと悲鳴を上げる。
「おいおいソアレよぉ、何ひとりで楽しそうなことをやってるんだ。俺も混ぜろよ」
「別に隠していたわけじゃないし僕もできるだけ戦いたくはないよ」
座り込んだ魔導人形は成人女性ほどの大きさ。手足は完全に砕かれ顔にも無数のヒビが入っていた。
「少し、びびらせるだけでいいよ。王都で変なことを起こすとすぐに騎士団が来るから」
「ついでに他にいないか聞いてくるわ。ロゼ、ソアレちゃんとその子の保護をお願いできる?」
「わかったわ」
逃げていく男たちを捕まえて事情を聞く。というかほぼほぼ拷問に近い気がする。
ロッガの元へと連れて行った破壊寸前の魔導人形。それを見て顔をしかめる。
「他の大陸では種族だとはいってるんだがここは人間国家。やっぱりこうなることも少なくはないからな」
「大きいのもいるんだね」
「獣人モデルもいるそうだぞ」
「あ、パーツの修復にこの木を使ってよ。魔力レベルも他とは強いと思うし」
「いいものを持ってるんだな。ガレスから話は聞いていたが見る目がある」
一瞬にして枝を乾燥させサイズを合わせて切っていき加工する。ロッガ曰く細かい作業は苦手だそうで単純な武器の合成なら喜んでやるのだそう。
「アクセサリーとかは」
「この図体でやると思うか?」
「あは、思いませーん」
素直なやつだと頭を撫でまわされすぐに出来上がった魔導人形。あの後三体見つかったそうで合計四体の成人女性サイズが揃った。
「こいつらは種族としてこっちにきたんだろうな。ストレス発散の道具に使われるとは誰も思っていなかっただろうに」
「攻撃はできないの?」
「胸部に入っている魔石の属性によって従えることができる。そのマスターと呼ぶ魔導人形はソアレの魔力で動いているのと同じだからな」
都合いのいい道具さとため息をついた。
「つまりそれって僕の魔力とは別に別の魔力を流しこめばどこかの誰かに無理やり従わせることはできないってことか」
「ん?あぁそうだな。複雑であればその魔力構造を見抜けない」
じゃあと体外に放出される黒い魔力。どこかドロドロしてそうなその魔力にぞくりと背筋が冷える。
「俺の闇の属性と光の属性を掛け合わせた上で目玉に使った魔石に追加属性を重ねるとどうなる?」
「それはちっとはややこしくなる。起動させた上で魔術をかければもっと複雑になるがな」
吸い込まれていく黒い魔力。同時に白い魔力も吸い込まれていき起動する前にロッガの魔法ペンを使って重複で魔術を施す。魔法文字を重ねるだけだが。
「っと、こんな感じかな」
「あたしにもやらせて」
あたしの子も目覚めさせるのと魔力を注ぎ魔法ペンで魔術を施した。目覚めたそれぞれの小型魔導人形と連れ帰った魔導人形は言葉を話す。
「魔導人形である我々を助けた挙句元に戻してくださりありがとうございます」
「気にしないで。僕がしたかっただけだから」
作ったのはロッガだけどと苦笑する。僕には緻密なものは作れないから。
「ですがなぜ文字を重ねたのですか?人間であればストレス、というものを発散するのに我らが必要なのでは」
「人によって発散方法は違うからね。他者に迷惑をかけてストレス発散をするのはあまりいいことじゃないから」
なるほどと考える魔導人形たち。
「助けられた恩があります。あなた方の元に置いてください」
料理などはできますという言葉に反応したのはバルザだった。
「それなら頼むわ!」