新米冒険者の現状。
「半年後――」
はぁーっ、ようやくこれで19階層クリアか!」
あれから半年ほどたったが、チームの一員としてダンジョンに入ることができるのはまれで、基本的には1人で人の少ない時間に潜っていって戦いの経験を積むか、自分の立ち回りのイメージを模索しながら呪文の練習をしているかだが、
今日はC級ダンジョンへの帯同を認められていて、今日の朝から潜りはじめも、まもなく最終階層の20階層に突入する。
「いつもより長い距離歩かせていると思うけど大丈夫かい?」
普段の俺は10階層より下の階層にいくことを許されておらず、また活躍時間も短く設定されているため普段より長めの探索となっているからだ。
「大丈夫だ!まだ全然いけるぞ!!」
今日こそ活躍してチームに定着してやる!!
これでチームの一員としてダンジョンに参加するのは3回目になるのだが、前の2回とも途中で帰るよう指示されており最後まで参加させてもらえなかったので、、
俺は密かにこれを試験だと考えて挑んでいて、先ほど前の記録の16階層も更新し、今はついに最終階層の20階層にまで到達できている。
個人的にもここまでノーミスの勢いで活躍できており、夢のボス戦まであと一歩だと思うのだが、、
「さっきからずーっと!顔怖いまんまだぞ~~??」
リラックスリラックス~~!!と肩を揉んだり(肩に胸がぶつかる)回り込んできては、
「肩に力が入りすぎ!!緊張のしすぎはよくないよ!!」
と、、俺の目を覗きこむかのような上目遣い攻撃に、別の意味で緊張してしまうが、これも俺を気遣っての発言であるし、なにより以前から、自然体でいることを求められていたため、今俺はこのアドバイスを受け入れなければならない!!
「あー!!そんなに近寄られるとあっちが緊張でビンビンになっちまうぜーー!!」
と、思いきって明るくふざけてみたのだが、
「ハァ、、別にそういうことをいえとはいってないから。」
「ちょっ!変態!!サイテー!!(これ頑張ってくれたら少しはいいけどぉ。なんて!きゃー!!)」
アインから軽いパンチとすねにキックをもらう。
ちなみに、今のは彼女のなかでの軽いレベルという話で、
一般男性の攻撃力65
アインの攻撃力660
となっており、半年間みっちり鍛えた俺も
一般男性の守備力60
しんやの守備力55→160
と、大きく成長をとげてはいるものの、数値差だけみても約4倍
ほどの差があり、彼女のスキンシップにたいしてバリアを張らない俺の腕にはとーぜんながらひびが入るのだ。
半年間鍛えたおかげで痛みへの耐性があがった俺は、今回も表情を崩すことなく後ろにまわってポーションを飲む。
ちなみに、ものすごい無駄遣いではあるがこうなった際には魔法を無詠唱で唱えていて、
『ムーヴ』……対象の視覚外にある自分のものを好きな地点に送り込むことができる。
マジックパックの中にあるポーションの液体だけを口に移動させて飲むことができるようになったためか
「飲まなくてだいじょうぶ。あたしが治す。」
あれ?気づかれていたのか?自分用のマジックパックから使ってたのに。
「どうして気づいたんだ?フリゼイダ?」
「アインのゴリラパンチはあなたにはまだ早い。。」
「ちょっ、、ゴリラパンチって失礼すぎよ!!」
少し恥ずかしげにツッコミをいれるアインがとてもかわいいなんて思っていると、、
「今度は気が緩みすぎ!鼻の下伸ばしてないで集中してくれよー?」
うわっっ、、やっちまった!!せっかくいい感じだったのにと俺がショックを受けていると、ピケは突然石を拾いあげノールックでビルゼイアに向かって投げたのだが、
「シュッ!」
「パキーン!!」
ピケの投げた石を平然とバリアを張ってとめてしまったのだ。
「きみはもっと仲間を信頼するべきだよ、彼女の能力の高さをきみはもっと信頼すべきだ。」
他人に依存するという行いに慣れはしないものの、ブリセイダの能力の高さは身をもって知っているため異論はないし、これが仲間だというものだと覚えておこう。
きっと、お互いの長所に頼ることがチームとしてより大きな力を放つ方法なのだろうから。