2日目③ 混乱する推理
向かったのは真帆の部屋の前だった。
ドアを開いて中を見ると、女子の死体が転がっていた。それは飯田さんの死体だった。
「……は?」
潤は訳が分からなかった。
さっきまで3人で話していた飯田さんは、変わり果てた姿になっていた。
死体には背後から刺された痕。
「彩乃さん、貴女はどうやってこの死体を見つけましたか?」
「え、それは」
「私が言ったから」
そう言ったのは、部屋の奥の壁に寄りかかりながら死体を見つめ立つ、葉月の姿だった。
「私が殺した」
◆◆◆
彼女の告白に、全員が息を呑む。
そこへ新も到着する。
ここの部屋には、今生きている7人が全員集合した。因みに3人は坂本くんが死んでいると言う事を知らないだろう。
いや、彩乃が言ってたら知らないのは新1人だけになる。
「坂本は呼ばなくていいのか?」
潤の発言に、琴美や彩乃は訳がわからない……と言った表情を見せる。古田は潤が鎌をかけたということをすぐに理解し、彼女らに目で合図した。
「彼は怖がっていたし、良いんじゃないかしら」
彩乃は「え」と声をあげる。
「葉月さん、坂本くんが怖がってるの知ってたんですか?」
「どう言う事だ?」と潤は彩乃に訊く。
「昨日、みんなバラバラに帰って、葉月さんと真帆ちゃんが帰ったあとに彼は泣き叫びながら玄関に向かったんです」
「声よ」
「声?」
「泣き叫ぶ声がして、背後を振り返ったら玄関に向かう彼と、それを追う貴女の姿が見えたわ。廊下を歩いている途中だったもの」
「あ、そうなんですか……」
と、彩乃の疑問はすぐに解かれた。
「……まさか、坂本も?」
と、新は難しい顔で訊ねる。
潤が頷くと、深いため息をついた。
「マジでなんなんだよ……」
「そうですか……それで言うと彩乃さん、今の貴女の発言は私を疑うようなモノでしたが、それは間違っています」
彼女は持っているサバイバルナイフを金庫の中にしまった。そして、血のついた制服を着たまま彼女は話し始める。
「だって、彼女を殺したのは私だもの」
「なんで、殺したの」
そう訊ねたのは琴美ちゃんだった。
「真帆がトイレに行ってる時、彼女はサバイバルナイフを持って部屋に入ってきたのよ」
彼女の目線の先には、飯田さんの手元。そこには少し離れた場所にサバイバルナイフが落ちていた。
「私はすぐに分かった。私を殺して、真帆が私を殺したように見せかけようとしているんだって」
彼女は窓を開けると、涼しく強い風が中に入ってきた。彼女の長い髪を舞い上げる。
「私は貴方たちとは違うわ。自分の犯した罪を告白した。私は素手で戦いながら真帆に守ってもらうから平気。真帆はまだ人を殺していないから、サバイバルナイフを使う事ができる。だから私と真帆を殺す時は、2人で対抗するから覚悟しておいてね」
彼女の隣に立つ真帆のボブショートも、強い風が舞いあげていた。並ぶ2人は、何処か冷たくて怖く感じてしまった。
◆◆◆
古田は自室からノートを持ってきて、ラウンジに移動した。琴美ちゃんと彩乃、潤の3人もラウンジに移動する。
「いろいろな話が崩れました」
村木 →0%/with須藤
藍田 →??
及川 →和田?
清田 →??
飯田 →50%
須藤 →0%/with村木
和田×
古田 →0%
坂本 →10%
新 →20%
メモにはそう書かれていた。
古田くんは新しいページに書き直す。
村木 →
藍田 →
及川 →飯田
清田 →
須藤 →
古田 →なし
新 →
和田× ←
坂本× ←
飯田× ←及川
「確か、葉月さんは真帆ちゃんはまだナイフを使えるって言ってた」
「そうですね」
彼は納得すると、真帆の横になしと付け加えた。
「正直に話していただけると嬉しいです。皆さん、誰か人を殺しましたか?」
全員は首を横に振る。
少なくとも、彩乃と潤は人を殺していない。
「……」
村木 →なし
藍田 →なし
及川 →飯田
清田 →なし
須藤 →なし
古田 →なし
新 →??
和田× ←??
坂本× ←??
飯田× ←及川
「もしも本当に清田さんが人を殺していないのなら、この中に嘘つきがいます。葉月さんの話が嘘というものなら、清田さん、そして新くんの2人が殺していることになります」
村木 →なし
藍田 →なし
及川 →飯田
清田 →和田
須藤 →なし
古田 →なし
新 →坂本
和田× ←清田
坂本× ←新
飯田× ←及川
「……この場合が今のところ、無難に考えられます。この中に嘘つきがいないバージョンです」
彩乃たちは顔を見合わせる。
そこへ、口を開いたのは琴美ちゃんだ。
「でも、真帆さんが和田くんを殺した線ならあり得ますよね。古田くんの推理の逆……古田くんは先に葉月さんが殺しに行ったって言ってたから、その逆で先に真帆さんが殺しに行ったとか」
「それを考えて、この図にしました」
「あのさ」
と、彩乃も口を挟む。
「新くんが和田くんを殺したって事ない?」
「貴女はアレが全部演技だと?」
「だって、真帆ちゃんが和田くんを力関係的に殺せないと思うし、一番近くにいて一番アリバイの作れるのは新くんだから……」
古田くんは軽く頷く。
「確かに、その線も考えられますね。今言えることは、新くんと真帆さんは高確率で殺人を犯している。つまりここにいる人たちが武器を持たなければ、殺人は起きません」
◆◆◆
古田くんと琴美ちゃんは部屋に帰った。
2人はそのまま、ラウンジに残る。
「ねえ潤くん」
「ん」
「潤くんは、人殺ししないでね」
「当たり前だろ?」
その言葉を聞いて、彩乃はどこか安心していた。
「ここから出たら、また会ってくれる?」
「もちろん。だけどそれは先が長いな」
「あと3日もあるもんね」
「ああ」
その後、食堂で夕食をとり、
彩乃たちは分かれて部屋に戻った。
ベッドに仰向けにダイブした彩乃は、天井をずっと見つめていた。自分が殺されてしまうのではないか?という事を考えてしまうと、心臓がバクバクと動いて余計に不安になる。




