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2日目② 深まる疑心暗鬼


 彩乃と潤、飯田の3人は食事を済ませた。

 一緒にお話ししよう、そういう流れになったのだ。


 彩乃はトイレに行くと言い、一旦自室に向かった。

 その時、通り過ぎた部屋の中から、何やら喘ぎ声のようなものが聞こえてくる。


「……?」


 そこは真帆ちゃんの部屋だった。

 耳を澄ませると、やはり真帆ちゃんの部屋の中から喘ぎ声のようなものが聞こえてくる。


「………じ……ま」


 真帆ちゃんが何か言っている。

 だがドアのせいで聞こえづらい。


「はぁ……」


 人の行為を邪魔するような心は持っていない。

 ここはそっとしておこう。


 途端に、真帆ちゃんの相手は誰なのか?そんな疑問が浮かんだ。和田くん以外の男子で関係を持ちそうな男子……それは新しかいなかった。


 そう言えば、あれから古田くんを見ていない。彼は食堂には来なかった……一体何がしたかったのだろうか。


 それと、坂本くんの姿も見ていない。

 琴美ちゃんの姿もだ。


 ……そうだ、トイレに行きたかったのだ。


 2人には待ってもらっている。彩乃はすぐに自室のトイレへ駆け込んだ。トイレを済ませて部屋を出ると、ある疑問が浮かんだ。


 ――和田くんは何故、個室のトイレじゃなくて共有トイレにいたんだろう?


 考えながら歩いていると、また、真帆ちゃんの部屋からは喘ぎ声のようなモノが聞こえてきた。彩乃は今度はそれを無視した。いや、正確には頭の中がトイレの謎でいっぱいだったのだ。


 これは、2人に話した方が良い……いや、

 和田くんは飯田さんに会いに行くと言っていた。そのトイレで待ち合わせをしていたならば、飯田さんにだって殺す事は可能になる。


 誰も、和田くんが共有トイレで殺されたのも、そこから出てきた怪しい人物というのも目撃していない。


 いや……?

 そもそも新くんは何故、共有トイレに行ったのだろうか?彼は飯田さんと和田くんが会うという事も、場所も知っていたという線が一番濃い。


 謎はまだまだありすぎる。




 ◆◆◆




 彩乃は2人と合流する。

 3人はそのまま、ラウンジに移動した。


「昨日から、曇ったままですね」


 と、彩乃は外を見つめながら残念そうに言う。


「私、曇りは逆に好きです」


 飯田さんは、少しだけ明るい声で返す。

 潤は「俺も涼しい曇りの方が好きかな」と言った。


 すると、娯楽室から出てきた新くんと目があった。新は昨日より機嫌が悪そうな感じで、睨みながら歩いて行った。


「あれ?」

「ん、どうしたんですか?」

「いや、あのさ……言っていいのか分かんないんだけど、真帆ちゃんの部屋の中から喘ぎ声のようなものが聞こえたの」


 喘ぎ声、というワードを聞いて飯田さんの顔は赤くなった。潤は「ほぅ」と興味深そうな顔を見せる。


「潤はここにいるし、古田くんはそんなタイプじゃないと思ってるし、なら新くんかなとか思ったんだけど彼はここにいた、じゃあ相手は……坂本くん?」


 あの酷く怯えていた坂本くんが、翌日にヤケクソになって真帆ちゃんを……?


「その、行為の相手なんて誰でも良いけど、3人は必ず違くて1人は考えにくい……そうなるとちょっと気になってきますね」


「あれ」


 ラウンジから外を指さした潤。

 見ると、廊下を古田くんと琴美ちゃんが2人で歩いていたのだ。


「あの組み合わせもどういう組み合わせ?」


 潤は微笑する。


「ねぇ、今日さ、坂本くん見てないの」

「俺も」

「私も見ていません」


 昨日、坂本くんはずっと玄関にいたのだ。

 あのまま帰っていなかったのなら、そこで……死んでいるはず。だけど部屋に帰ったなら、誰も姿を見てないから食堂にも行っていないだろう。


「彼のことが心配ですか?」

「え、あ、うん。昨日さ、坂本くんずっと玄関で泣いてたから、ちゃんとあの後帰ったのかなって」

「では、私は部屋を見てきます」

「うん、お願い」


「じゃあ俺たちは一応、玄関見とくか」

「玄関にいない事を祈りたいけど……」


 そう言って、飯田さんは坂本くんの部屋に。

 彩乃と潤の2人は玄関に向かった。


「ねえ、あれ……」


 玄関への廊下、そこからは遠くに倒れている人影が見えた。潤は驚いて駆け寄った。


 玄関のドアは自動ドアで、自動ドアの向こうにうつ伏せに倒れる1人の男子生徒がいた。それは坂本くんで確定でいいだろう。


 潤は死体に近づき、手を伸ばす。

 手だけ外に出ても、首輪は何も反応がない。


 さらに手を伸ばすと、潤の手は坂本くんの足首を掴んだ。潤は力一杯坂本くんの死体を引き、中へと引きずった。


「ちょっと?!」

「彩乃、みんなを呼んできてくれ」

「え、でも」

「良いから!」

「……わかった」


 ――肉体的な汚れ仕事は、俺にしかできない


 潤はそんな使命感から、必死に死体を中に引き摺り込んだ。死体を裏返し、仰向けに寝かせる。


 腹部に刺された痕、

 そして首輪は作動したままで、首輪に沈んだ針は立てられたままだった。


 ――首輪の針が一斉に立てられるのか……今は横に寝かせられている状態だが、それが起き上がるように一斉に立つんだろうな。つまり首の表面を削りながら立つという事だ。


「お待たせしました」

「……っ!」


 最初に到着したのは、古田と琴美だった。


「外に出たんですか?」


 古田の質問に、潤は首を横に振って彼だけに手招きをする。古田は腹部の刺された痕を見て、何かを察した表情を見せる。


「……まさか、殺人?」


 背後で死体を目視しないように立っている琴美は、2人に訊ねる。


「そう、殺人だよ」

「そうだ須藤さん……さっき言いそびれた事を言いますね」


 それは、さっき彩乃が「朝だから」と言って聞けなかった部分だ。


「僕は……彼が何故、個室のトイレでは無く共有トイレにいたのか?という疑問を持っていました。そこで琴美さんと2人で探検してわかった事をも踏まえて言います」


 琴美もこくりと頷く。

 どうやら2人は推理のために共に行動していたようだ。


「まず、僕たちは和田くんの部屋に行きました。ですが何も変わらず普通の部屋でした。トイレも見ましたが故障等は無く、恐らくあの場所には呼ばれて行ったと言うことが確定でいいでしょう」


「確か、新は和田が飯田さんに呼ばれてって言ってたね」


 古田はこくりと頷く。


「ですが彼女は会っていない。それどころか、彼女はその上の階の女子トイレにいました」


 各階の男女トイレは、片方が封鎖されていて◯階の男子トイレで上の階に行くと言う間違いは無い。


「つまり、彼女も呼ばれて女子トイレにいたというような推測ができます。こればかりは本人に聞いてみないとわかりませんね」


「何故、人気のないトイレに……?」

「それはきっと、殺すためでしょう」


 古田くんはニヤッと笑った。


「私は犯人の目星がついています」

「……え」

「及川葉月」

「でも、彼女は清田真帆さんと一緒に」

「それが作戦だとしたら?」

「え?」


「葉月さんが人殺しを行なっている時に、真帆さんはずっと部屋にいる。そして葉月さんが帰ってくると次に真帆さんがもう片方を殺しに行く……だがその計画は狂いました」


「新に見つかった?」


 古田は3回小刻みに頷く。


「その通り、だけどあと一つ、彼女らに作戦があると考えられます。疑心暗鬼になって殺し合いを始めた僕たちを見て、一番持ち金が多そうな人を真帆さんに殺させると言うやつです」


 彼女らは常に2人でいる。

 その部屋の様子は見れない。


 だけど、本当にそんな事が可能なのだろうか?


「……あくまで推測です」

「頭に入れておく」

「正直彼を殺した犯人はシークレットです。彼を殺した犯人を探しても時間の無駄でしょう。」


 古田は坂本の死体を見下ろしながら言った。


「みんな……っ!」


 そこへ、息を荒くした彩乃が戻ってくる。


「お願い……来てっ!」


 その様子を見て、ただ事じゃないのは理解した。

 4人は彩乃の案内のもと、早歩きで向かった。


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