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1日目③ 5年ぶりの再会


 彩乃は丸テーブルに肘をつき、潤に質問を投げかけた。


「潤は何でここに来たの?」

「俺さ、受験に失敗したんだ」

「……え?」


 潤は小学校の頃は、成績良くてサッカー部のキャプテンで……何でもできるイメージだった。いや、猿も木から落ちると言うし……受験失敗なんて誰にでも起こりゆることだ。


「中学に行って、俺、結構遊んじゃっててさ」

「へぇ……」

「まぁ勉強はしたっちゃした……だけど市内で1番の所受けたけど落ちちゃってさ」

「でも、そこ受けるって事は頭良いんじゃん」

「まぁな。学年でも4位だったし。でも落ちたもんは落ちた……本番の点数が足りなかったんだ」


 潤は暗くなった中庭を見つめながら話を続ける。そんな彼の顔を照らすように、室内の明かりがつく。


「ほら、俺、小学校卒業してから引っ越したろ?だからみんなと同じ中学行かなくてさ……んで、その引っ越しの理由が両親の離婚」


「そうだっだんだ……」


 潤の両親とは、彩乃の両親も仲良くしてもらっていた。顔も覚えているくらい良くしてもらった記憶がある。あの夫婦は離婚したのか……


「母親1人で働いてて、俺は母親の負担を減らすために県立を目指したんだけど、落ちて私立に行ったんだ。私立の学費高くてさ、母さんには……いろいろ迷惑かけちゃったからさ、この金で少しでも……そんな思いでここへ来た」


 ――私なんかとは違って、ちゃんとした理由があってここに来ているんだ


「大変だったんだね」

「ああ」

「……なんだか、暗い話になっちまったな」

「こっちこそ、辛い事話させちゃってごめん」


 潤は、彩乃の方に顔を向けた。椅子に座り、彩乃の顔を見つめる。


「え、なに?」

「彩乃がここに来た理由、知りたい」

「大した理由じゃないよ」

「それでも良いよ」

「分かった。」




 ◆◆◆




 彩乃のクラスの女子には、見え見えのカースト制度があった。女子カーストのてっぺんに居座るのがギャル2人。モデルのように大人っぽく美人なお嬢様と、お団子の小柄な女子だ。


 彼女ら……主にお団子の方だが、自分らと仲があまり良くない女子のことを見下しては、本人たちに聞こえるように笑っているなどと、嫌がらせを繰り返して来ていた。


 彼女たちの仲間入りした女子も、お団子と一緒に彩乃や他の女子を見下しては笑っていた。


 そんな、めんどくさい人間関係に飽きてしまった。金は欲しいけど、1番の目的はお金じゃない。全てに疲れて嫌気がさし、全てがどうでも良くなっていた。


 このつまらない人生、

 何か転期が訪れてくれないか。


 そんな事を考えていた時に、海老原さんと会った。


「……ね、下らない理由。ただ人生に飽きちゃった、何をしたら変われるんだろうってずっと思ってた」


 潤は無言で話を聞いてくれていた。

 彩乃の話が終わると「そっか」とそれ以外は何も言わなかった。すると、話し終わったタイミングで雨が降ってくる。


「なんかお前と2人でいるとさ、いろいろ思い出すな~小学校の時のこと。もう思い出すことなんて無いんだろうな……なんて思ってたけど」


 雨を背景にした彼の姿が一瞬、小学生の頃の彼の姿として、彩乃の目に映った。短髪で爽やかな少年……そのまま大きく成長した感じだ。彼は何一つ変わっていない。


「変わってないね、潤くん」

「そうか?」

「うん、あの時のまま」

「彩乃は大人っぽくなったな」

「ありがと」

「おう」


 その時だった。

 静かだった館内の遠くから、何やら喧嘩のような声が聞こえてきたのだ。男子の誰かが叫んでいる……まるで怒っているように聞こえた。


「なんか喧嘩してない?」

「ちょっと行ってみるか」

「うん」


 男子の怒りの声は、2階の廊下から聞こえてくる。2階の廊下には男子の部屋が並んでいる。


 階段を降りて廊下を曲がると、男子の部屋の廊下の前で、新が飯田さんの胸ぐらを掴んでいた。


「ちょっと?!」




 ◆◆◆




 潤はすぐに止めに行った。

 飯田さんは殴られたりされた形跡はなく、ただ胸ぐらを掴まれて責められてただけといった様子だった。


「落ち着け。ちょっと落ち着け?」

「あ?! 落ち着けるかよ!」


 新は止めに入った潤を突き飛ばす。


「なぁお前、自分で言ってたよな?!」

「だから違うって!」

「嘘つくんじゃねーよ!」

「だから嘘なんてついてない!」

「あ?!」


 と、新は再び飯田さんの胸ぐらを掴む。今の衝撃で飯田さんのメガネは床に落ちてしまった。


「ねえ新くん、やめて!」


 彩乃は必死に叫ぶ。

 上の階の自室にいた女子たちは、そのやりとりを聞き、階段を降りてきた。


「……ちっ!」


 大きな舌打ちをして、新は飯田さんをそのまま突き放した。突き放された飯田さんは廊下の窓側に背中をぶつけ、そのままズルズルとその場に座った。


「……んだよ、……なんなんだよ」


 新はぶつぶつと呟き始める。殺意の宿った鋭い目は集まってきた彩乃たち一人一人の事を睨んでいた。そこへ、冷静に葉月さんが問いかけた。


「貴方は、何をそんなに怒っているの?」

「……ついて来てくれ」




 ◆◆◆




 2階の廊下をまっすぐ進み、左へ曲がった。

 すると、廊下にある男子トイレの入り口の下が、何やら赤黒く染まっていた。その染みはまるで引きずられたようにトイレの中に続いている。


 葉月さんは先陣を切った。

 彩乃たちも、葉月に続いていく。


 男子トイレを覗く。


「きゃっ!」


 彩乃は悲鳴をあげてしまった。

 男子トイレに入ってすぐのところで、和田はうつ伏せのまま倒れていた。背中には何ヶ所も刺された痕跡が見つかり、首の裏にも刺された痕があった。


「和田……」


 潤はボソッと呟く。

 彩乃や潤たちの後から男子トイレの中の光景を見た真帆や琴美、坂本くんらは酷く驚いた様子を見せていた。


「だ……誰が、誰が殺ったんですか!?」


 坂本くんは叫び、全員から距離をとる。

 葉月はゆっくりと新に近づき、状況を尋ねた。


「さっきの、飯田さんとの口論の理由を教えて」

「……和田さ、飯田に会いに行くって言ってたんだ。何の用事かは知らねーが」


 葉月は飯田さんに視線を移す。


「それで、彼は会いに来たの?」

「会いに来てません、だからそんなの知らない!」

「本当に?」

「本当です!」

「じゃあ、貴女は何故男子の廊下にいたの?」

「叫び声を聞こえたから。私はちょうどこの上の女子の階のトイレにいました。新さんの叫び声を聞いて、私が降りてったんです!」


 飯田さんは必死に自分の状況を話す。


「……ナイフを見せるのはどうかな?」


 古田くんはゆっくりと淡々とした声で提案する。すると潤がそれを否定する。


「やめておいた方がいい」

「……何故ですか?」


 古田くんは、まるで疑いの目を向けるかのように潤を見つめた。


「今、この9人の中に1人だけ20万円を所持している者がいるだろう?そいつはもう人を殺せない……だったらそいつを狙ってまた殺人が起きるかもしれない。殺人の連鎖が始まってしまう」


「貴方は、私たちが殺人を犯すとでも!?」

「でも実際に起きてるだろう!?」


 と、飯田さんに強く反論する。


「まるで、血がついたナイフを見せたくない、そんな風に見えますね」


 と古田くんは淡々と推理をし始める。

 だが、それは間違っている。


「私と潤くんにはアリバイがある。私たちはずっとあのラウンジにいました」


 古田くんは「ほう……」と意外そうな声を出す。すると古田くんは自室の方に戻って行った。


「場所を移そう」


 潤の提案で、全員は会議室に向かった。

 途中でノートを持ってきた古田とも合流する。




 ◆◆◆




 会議室に集まった彩乃たちは、全員が誰とどこにいたか?というのを話した。その場所を古田くんがメモしていく。


彩乃 →ラウンジ/潤

葉月 →真帆の部屋/真帆

琴美 →自室

真帆 →真帆の部屋/葉月

飯田 →女子トイレ


潤 →ラウンジ/彩乃

新 →自室

古田 →自室

坂本 →図書室


 アリバイが無いのは5人となった。

 この中の誰かが、和田を殺したのだ。


「もう、正直に言ってくださいよぉぉっ!この中に人殺しがいるんですよね、そんな人と、あと4日……一緒に暮らせませんよぉぉぉ……」 


 坂本くんは、泣きながら弱々しく呟く。

 恐らく彼の反応からして、犯人ではない。たぶん新くんも違うと思う。


 一番黒いのは、和田が死ぬ間際に会いに行くと言ったらしい、飯田さん。


 でも自室にいた古田くん、琴美ちゃんも怪しい。


 古田くんは必死に推理に参加しているが、どこか落ち着いている。琴美ちゃんは暗い顔を浮かべ誰とも目を合わせず、窓側の床ばかりを見つめていた。


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