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1日目① ゲーム・スタート


 目が覚めた。

 外は明るくなっていた。


 見慣れない部屋で目を覚ました彩乃は、すぐに自分の置かれている状況を思い出した。


 ――そうだ、バイトしてるんだ。


 ベッドから足を下ろすと、目の前にあの金庫が見えた。その金庫の中身を思い出すたびにぞっとする。しばらく窓の外の木々を眺めていると、ぎゅるる…と自分のお腹の音が鳴った。


 ――なにか食べに行こう。


 そう思い、部屋から出たら「うわぁっ!」という女子の声が聞こえた。すぐに廊下を出てドアを閉めると、ボブショートの女の子が尻餅をついていた。


 制服のスカートからは白のパンツが丸見えだ。


「ごめんっ、その……パンツ見えてる」

「へ?あっ!」


 少女は顔を赤らめ、咄嗟にパンツを隠した。急いで立ち上がると、スカートの前の方を強く押さえていた。


「突然ドア開けちゃって、驚いたよね」

「あ、はい……ドアがぶつかって来そうだったので驚いちゃいました」


 のほほんとした話し方の少女は、照れ笑いを見せた。女の私だが、今のは惚れるポイントだ。


「あっ、私、清田真帆って言いますっ」

「真帆ちゃん?よろしくね、私は彩乃」

「彩乃……さん?」

「うーん、真帆ちゃん高校何年生?」

「1年生ですっ」

「じゃあ、私は2年生だし、そのまま“さん付け”でいいよ」

「はいっ。彩乃さんっ」

「あーー……やっぱ変な感じ。やっぱり好きな風に呼んでいいよ」


 彩乃は、真帆と2人で廊下を歩いた。

 どうやら、真帆も食堂に向かうところのようだ。


「他の人とはもう会った?」

「いえ、まだです」

「そうだよね」


 恐らく、食堂には何人か人がいるだろう。

 真帆は……ナイフを持って人を殺しそうなタイプではないと感じ、彩乃は少し距離感を近く感じた。


 ――この子なら、安心かも




 ◆◆◆




 食堂には案の定、他の高校生らがいた。

 男子が3人、女子は2人だ。


「お、女子が来た」

「おっはよ~2人ともー!」


 茶髪のセンターパートの男子と、高身長な垂れ目の男子は彩乃たちを見て手を振った。もう一人隣にいる男子は、何処か懐かしい雰囲気を漂わせていた。


「おはよう」

「おはようございますっ」


 真帆は声を震わせていた。

 どうやら人見知りのようだ。


「女子はあと一人ですね」


 と、メガネの女子はハキハキと話した。

 その隣には、高身長で何処か大人びた高校生?の女性が座っていた。彩乃たちは2人の元に近づいていく。


「男子の皆さん、一度ここへ全員が集合するために部屋を見てきてくれませんか?私は残り一人の部屋を見てきます」


 メガネの女子は、男子たちに指示を出す。

 それを面白がっているのか、そもそもそういう顔なのか、垂れ目の男子はニヤニヤとした表情を見せ「おっけー」と返した。


「2人は食事をしててください」


 そう言うと、彼女と男子2人は去っていった。

 残ったのは高身長の女子と、懐かしい雰囲気の男子だけだ。


「……あぁ、食事ならあっちの厨房の方に置いてあるわ。コンビニの食事って感じだけど。カップラーメンとかもあるから」


「ありがとう。真帆ちゃん、いこっか」

「はいっ」


 彩乃たちは、奥の厨房に向かった。

 厨房の台の上には、カップラーメンや市販のパンが置いてあった。レンジで温めるご飯の横にはふりかけが粗末に置いてあった。


「このふりかけ懐かしい~!」

「え、そうなの?」

「おばあちゃんの家で食べたの思い出すな~」


 真帆はご飯をレンジに入れ、温め始めた。

 冷蔵庫の中には紙パックの牛乳やジュースが入れてあった。


「真帆ちゃん、何ジュースが良い?」

「え?あ、じゃあオレンジジュースで!」

「了解~」


 彩乃は牛乳とオレンジジュースの紙パックを取り出し、朝食べる用のパンの隣に置いた。どうやらご飯の温めも終わったらしく、彩乃たちは一緒に厨房から出て行った。


 食堂の席に座り、会話をしながら食べていると食堂の入り口から複数人がやって来る。初めて見る女子が1人と初めて見る男子が2人……どうやらこれが全員のようだ。


「なぁそこの女の子たち、全員で話すためにこっちの列のテーブル来なよ」


 垂れ目の男子にそう言われ、私たちは席を移った。座り方はちょうど男子と女子が5人ずつ向かい合う形になった。


 全員が席を決めてから、今起きてきた人たちは厨房に食事を取りに行く。


 全員が席につくと、メガネの女子が仕切り始める。


「全員揃いましたね、では最初に自己紹介をしましょう。それぞれ自分の名前と、あだ名があったらそれも話してくれて大丈夫です。では私から」


 メガネの女子は立ち上がった。


「飯田美穂です。苗字で呼んでください」

「質問質問」と垂れ目の男子が挙手をする。


 飯田さんは質問が飛んでくるのを想定していなかったのだろう、少し驚いた表情を見せた。


「え?質問だめ?」

「いえ、大丈夫です」

「君、高校何年生?」

「1年です」


 ――まさかの年下?!

 と、彩乃は心の中で驚いた。


「へぇ年下なのに凄いね、何か委員長とかやってた系?」

「副委員長をやってます。中学の頃は生徒会長をしてました」

「だからそんなにハキハキしてるんだね~」

「ありがとうございます」

「いえいえ、次どうぞ?」


 垂れ目の男子は、飯田美穂の隣に座っている茶髪のツインテールの子を平手で指さす。


「藍田琴美、よろしく」

「飯田と藍田だって、一文字違いだね」

「そうですね」

「君は何年生?」

「1年生です」

「へぇぇ可愛いじゃん」


 琴美ちゃんは少し緊張している様子だった。

 女子と話すグループの中ではギャルで元気なタイプなのだろう……と勝手に想像する。


「清田真帆です。高校1年生です」

「へぇ1年生多いね~」


 真帆ちゃんはぺこりとお辞儀をした。


「それにしても、美穂と真帆……藍田と飯田ねぇ」


 垂れ目の男子はククク…と一人で笑った。

 確かに言われてみたら、飯田さんの名前も苗字も2人と似ていた。次は自分の番だと理解し、急いで立ち上がる。


「村木彩乃。高校2年生です」


 垂れ目の男子は「美少女じゃん」と隣の明るい茶髪の男子生徒にちょっかいを出す。


「及川葉月。高3」


 ロングヘアで前髪を分けた、女優顔の大人びた女子生徒は、淡々と自己紹介をする。垂れ目の男子の視線は彼女の大きな胸にいっていた。


「須藤潤。高2です」


 ――須藤潤?


 その名前には聞き覚えがあった。

 いや、はっきり覚えている。


 何処か懐かしい感じだったのは、彼と彩乃は知り合いだったのだ。5年前……彼と会ったのは小学校が最後だ。


 その瞬間、彼と目が合った。

 彼も気づいたようだ。


「村木さんとは、同じ小学校でした」


 彼は突然そうカミングアウトした。

 彩乃はぺこりとお辞儀をする。


「和田龍、高3。因みに新とは同級生」

「あーども、新侑士でーす」


 と、和田の紹介を受けて隣の垂れ目の男子も立ち上がり、自己紹介をした。ここは同級生だからもう仲が良かったのだろう。


「……古田裕太です」


 目をぱっちりと開けた不気味な少年は自己紹介をすると、隣の新が肩を組んだ。


「どうしたぁ?寝不足かぁ?」

「いえ、特になんでもありません」


 声のトーンに上がりも下りもない話し方は、何処か不気味な様子だった。


「わかった、お前その性格直したくて来たんだろ?」

「……?」

「おっけー、お前も今日から陽キャ特訓だ。この5日間で生まれ変わろうぜ~??」


 新は馴れ馴れしいが、彼なりの優しさなのだろう。特に他人を馬鹿にする事もせず、共に頑張ろうと声をかけた。


 古田くんが新くんの思う通りじゃなければ、古田くんにとっては迷惑な話だろう。


「坂本康平です。高校2年生です」


 メガネの少年はペコペコとお辞儀をして、そのまま座った。そこへ案の定、新が突っ込む。


「そんなペコペコしてちゃ、将来は暗いぜ~?明るく気楽に行こうぜ、少なくともここにいる奴らは、頭を下げるような偉い奴なんていないと思うぜ?」


 パンっ!

 そこへ、飯田さんが手を叩く。


「全員に聞きます。ベッド横の金庫の中を見た人は挙手をしてください」


 突然の事だった。

 今までの自己紹介の時の楽しい雰囲気は、一気に消えて行った。


「飯田ちゃんさ、仕切るのは良いけど空気読もうぜ?」

「空気を読め……ということは、新さんは中を見たと言うことで間違いはありませんか?」

「まぁな?」


 新はふっと笑い、そう答えた。

 そこへ、潤も手を挙げる。それに釣られるように彩乃も挙手をした。


「他は?」


 古田くん、坂本くん、及川さんも手を挙げる。

 手を挙げていないのは3人だけだった。


「あー俺そのまま寝ちゃったわ」と和田くん。

「私も見てません」

「私も」


 真帆ちゃんと琴美ちゃんもそう答える。

 この場にいる7人があの金庫の中を見たのだ。


「全員に言います。絶対に変な気は起こさないでください」


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