4日目③ 対立
古田の背後に回り、彼を押さえつける新。
そして、娯楽室に着きその様子を目の当たりにした琴美に、葉月はナイフを向けた。
「新さん?!」
新は何も喋らなかった。
ただ古田が動けないように押さえつけているだけ。
「まずはナイフを捨てなさい?持ってるんでしょ?」
「……!」
「貴女が私を……殺すだなんて、彩乃さんと相談するからぁ、こうなってるのよ?」
葉月は不気味な笑みを琴美に向けた。
琴美は表情に悔しさを浮かべ、その場から去ろうとした。
「良いのかしら!?」
葉月の言葉に、琴美は足を止める。
「古田くんが……貴女の信頼できる人が。一緒に推理して頑張ってた人が……痛い目見るわよ?」
琴美は古田の方を振り向く。
葉月は古田の方に近づいていく。
「やめてっっ!!」
琴美はここに来て1番の声を出した。
琴美の叫ぶ様子に驚いたのか、葉月は足を止めて琴美を睨む。
「なら、ナイフ置いたら?」
「……っ!」
琴美はナイフをその場に置いた。
「下がりなさい」
琴美は言われた通りに下がる。
葉月は琴美のナイフを回収し、窓から投げ捨てた。
「それで良いんだよ」
古田のナイフも回収し、同じように窓から投げる。同時に新は古田を解放した。
「……なんの真似ですか」
古田は2人から距離を取り、睨んだ。
「これ以上殺し合いが起きない為によ?」
「全部殺してるのはアンタでしょう?!」
琴美の言葉に苛立った葉月は、ナイフを片手にズカズカと琴美の方に向かった。琴美は壁まで追いやられ、左手でツインテールの片方を鷲掴みにされる。
そして片方の手にある赤グリップのナイフを、琴美の頬にペチペチと叩きつける。
「言ったよね?仕方ないんだって」
「……」
「私は殺したくて殺したわけじゃないの」
葉月は掴んだ手を離すと、そのまま娯楽室から出て行った。新も、俯きながらその場を去って行った。
琴美の目からは涙が溢れる。
脅されて殺されそうになった恐怖感、そして悔しさ。自分が彩乃に相談した言葉が引き金になって、古田にも迷惑をかけてしまった。
「琴美さん」
「……っ!」
琴美は拳を強く握りしめた。
◆◆◆
飯田さんが和田を殺した……そういう流れになっていたのを、琴美は受け止められなかった。
だけどその推測が間違っていて、本当に飯田さんが殺していたら?なんて思う気持ちもあった。
そんな気持ちを心に留めながら部屋に戻ると、女子の廊下のある部屋の前に、古田が立っていた。
――え、何してるのこの人?
琴美は不審な目を向けた。
古田はこちらに気づいた。
「飯田さんなら、食堂かもしれませんよ」
彼が飯田さんに用事があるのだろう思い、琴美はそう言葉をかけた。彼が去ろうと琴美を通り過ぎた時、琴美は呼び止めていた。
「ねえ」
「?」
「アンタも、飯田さんが殺したと思ってる?」
彼は首を振った。
「ですがまず、何故、和田くんが共有トイレにいたのかが気になります」
同じ事を思っている人がいた。
トイレは個室にあるのに、和田は何故共有トイレに?それは誰かに呼ばれたに違いない。
なら何故、飯田さんも共有トイレに?
「もしかしたら、飯田さんも呼ばれてたのかも」
「その可能性は高いですね。まずは和田くんの部屋、それから共有トイレに行ってみます」
そして彼が続けてかけてくれた言葉。
「一緒に行きませんか?」
和田の部屋を探したが、特に何もなかった。
共有トイレにも行ったが、和田の死体以外何も見つけることはできなかった。
「直接呼ばれたってこと?」
「いえ、その可能性は低いかもしれません」
「何故?」
「貴女の推理通り、飯田さんも呼ばれていたとしたら彼女も呼んだ人の名前を知っているはず。彼女が言わないと言うことはできなかった恐らく、別の方法で呼ばれたと見ていいでしょう」
琴美は首を傾げる
「別の方法?」
「……例えば、紙とかですかね」
2人が部屋の前を通り過ぎた時、真帆の喘ぎ声のような声を聞いた。そしてその後も真帆と葉月が共に行動しているのを見て、彼女らが繋がっていることに気がつく。
「恐らく、真帆さんと葉月さんはそういう関係まで進んでいるのかもしれません」
「でも上手く聞き取れなかった」
「僕にはこう聞こえました。“ご主人様”と」
「は、はぁ??アンタそう言うのの見過ぎ!」
「アンタではなく、古田裕太という名前があります」
その返しに腹がたった琴美も言い返す。
「なら、アンタもあたしの事を“貴女”とか言うの、やめてよ。私にだって名前あるし」
「ご主人様ですか?」
「バカ!違うっつーの」
「冗談ですよ、琴美さん」
「アンタの方が年上じゃん」
気づけばそんな仲にまでなっていた。
でも彼の子供のような感じから、年上という感じはしなかった。
「……もしかしたら2人がグルで、和田くんと飯田さんを殺そうとしたのかも」
その推理にも納得ができた。
2人には、2人でいたというアリバイがある。
「新さんの発見は早かった……だから2人目を殺せなかった。そう見てもいいかも」
古田は頷き「良い推理です」と少し笑顔を見せた。
彼は最初は暗かった。
でも、話しているうちに明るくなっていった。
推理を楽しんでいるだけじゃない。
そんな気がしていた。
◆◆◆
「古田くん、ごめん」
「いえ、こういう事には慣れています」
「……」
やっぱり、彼が暗くなったのって友人関係で何かあったのだろう。
「琴美さんにはそんな顔はしてほしくない」
「……ありがとう」
「さあ、食堂で軽く済ませたら、今日は部屋に行きましょう」
琴美は軽く頷き、彼の伸ばしてくれた手をとった。




