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4日目② 真実


 古田が指を向けた先は、葉月だった。

 葉月の表情は驚きもせず、その指を、そして古田の指をなぞるように見つめる琴美と新の視線を、ただ無表情で受け止めていた。


「犯人は、貴女です」

「……はい?」

「そして、貴女には協力者がいた」


 古田は図書室を指さす。


「真帆さんが、協力者ですね?」

「……何を言い始めたのかしら?」


「真帆さんが協力者なら、貴女と真帆さんが部屋の中までずっと共に行動していた事に理由がつきます。そして最初の和田くんの殺人事件も。坂本くんを殺したのも真帆さんを殺したのも、貴女ですね?」


 葉月はふっと笑い、分けた髪を流す仕草をする。彼女は突然窓を開けると、風が彼女の長い髪を踊らせた。


「……だから?」

「認めるんですね」

「ええ。だからどうする?私を殺す?」


 葉月は両手をそれぞれ古田と琴美の伸ばし、指をさす。


「殺人を犯していないのは貴方と貴女。私を殺すことができるのは2人だけ……貴方たちにできる?」


 葉月はニヤリと笑った。

 古田は首を横に振る。


「貴方が次に殺人を犯した時に動きます」

「……そう」


 葉月は真顔に戻り、腕を下げた。


「やっぱり、お金が欲しかったから人を殺したんですか?」

「……ええ、そうよ」


「クズじゃねぇかよ」


 と、ラウンジの椅子に座る新はそう呟いた。

 その発言に苛立ったのか「はぁ??」と言い、葉月は新の方へ向かって行く。


「昨日、俺を刺したのは?」

「ええ私よ」

「何故殺さなかった?」

「お前も、お前も……勘違いしてる」


 新と古田をそれぞれ続けて指をさした葉月は、そう言い残してラウンジから去ろうとした。


「逃げるんですか?」

「はい?」

「これは貴女が僕に言った言葉です」

「……」

「勘違い、とは?」


 葉月は振り返る。


「私は人殺しをしたくてしたわけじゃない!」


 そう叫ぶと、葉月は再び3人に背を向ける。


「じゃあなんで!?」


 琴美は塞がっていた口を開いた。


「……うるせぇよ」


 葉月は制服の上着に隠していたナイフを取り出し、鞘から出す。古田たちのとは違い、赤いグリップの巻かれたナイフだった。


「仕方ねぇんだよ!お前らだって、私の立場になったら絶対にこうしてる!」


 彼女はそう言って去っていった。


「……よほど辛い事があるんだな」


 新は去っていった葉月にむけて、そう呟く。

 琴美はナイフを見て顔を青くし、古田はその去って行く姿をただ睨んでいた。




 ◆◆◆




 琴美ちゃんからカギの説明をしてもらった。

 潤くんは、彩乃たちとは違うモノを持っていた。


 今思えば、そんな気がした。

 最初に「変な気を起こすな」と飯田さんが言った時に、彼は金庫の中身を見たと手をあげたのに「変な気とは?」と尋ねた。


 変な気とは、人を殺してお金が欲しいという下劣な考えのことだろうと、彩乃はすぐに理解した。


 だが彼は訊いた。

 その時は言葉の意味が理解できなかったのかな?と思ったが、彼がそう疑問に思っても仕方がないのだ。


 だって彼の金庫の中身はカギ。

 人を殺せるナイフなんて入っていなかったのだ。


 他にも思い当たる節はある。


 和田くんが殺された後、古田くんが「ナイフを見せるのはどうか?」と提案したが、潤くんは「やめたほうがいい」と、すぐにそれを否定した。


 それは彼がナイフを持っていなかったから。

 死体を見て、大切なアイテムだと思った彼は見せるのを拒んだ。


「……潤くん」


 そして彼は、最後の力を振り絞って、階段を上がりカギをかけた。1日部屋に閉じ込められるが、今、彩乃は一番安全な場所にいる。中からも外からも出入りのできない空間。


 絶対に殺されない場所。


 今日だけは、潤くんが守ってくれている。


「……ありがとう」


 彩乃は涙を流した。


「彩乃さん。私、葉月さんを殺そうか悩んでます」

「……え?」

「後1日、何人でも殺せるナイフを持っている殺人鬼と一緒にいるなんて無理です……それに、彼女がもう誰も殺さないとは思えない」


 涙声で話す琴美の言葉を受け止める。

 彩乃はどう声を掛けてあげたらいいのか分からなかった。自分だけは安全な場所にいて、彼女らはいつ殺されてもおかしくない状況なのだ。


 それなのに「ダメだよ!」だなんて言えない。言える立場ではないのだ。


「……琴美ちゃん、それなら常にナイフを持ち歩いてて、襲われた時に対抗して。あとなるべく、古田くんと新くんとの3人で行動してて」


 琴美ちゃんは「分かった」と重いトーンで答えた。


 ここからは「誰が殺したか?」の推理じゃない。

 殺されない為に、生きるのだ。




 ◆◆◆




 古田は独りで娯楽室のチェス台の椅子に座っていた。駒を手に取り、クルクルといじって遊んでいる。


「古田くん」

「……?」


 娯楽室の入り口には、葉月が立っていた。


「聞いてほしい」


 彼女はスタスタと古田に向かって歩いてくる。古田は睨むように彼女の手や腰回りを見て「止まって」と言い放つ。


 葉月は言葉通り止まった。


「そこで話してくれるかな」

「どうして?」

「この距離でも会話はできるでしょう」


 古田はそう言い、学ランに隠してたナイフを取り出す。それはまるで「近づいたら殺す」とでも言うように。


「……そう」


 彼女はがっくりしたように肩を落とす。


「それで?」

「琴美さんが、私を殺そうとしてる」

「……何故?」

「お金が欲しいんだって」


 古田は理解できないのか、難しい顔を浮かべる。


「貴女は何故、その話を?」

「彩乃さんの部屋の前で、ドア越しに相談してる琴美さんの姿を見たの」


 その時、新が部屋に入って来た。

 新はそのまま古田の方へ向かって来る。


「どうしました?」


 新は古田の背後はまわった。

 背後から古田を押さえつける。


「っ!?」

「……悪いな」


 そこへ、琴美もやって来る。


「……ちょっと、何してるの!?」


 琴美は驚き、古田を助けようと向かうとナイフを取り出した葉月は、ナイフの先端を琴美に向ける。


「……なんなの?」


 琴美は葉月を睨む。

 一方、部屋にいた彩乃はただ窓を眺めて、夕日が落ちていく様子を見ていることしかできなかった。


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