45°先
姿勢が崩れる昼下がり。
呪文を聞く気はないけれど自然と視線は前を向く。
数歩先のロングヘアーが今は邪魔に思えてくる。
昔の方が似合っていた。
全て綺麗に見えていた。
口元が緩む。
今の顔は見られないように気をつけなければならない。
人は目と目が合うと、
心理的に視線をずらしたくなるらしい。
しかしそれが羞恥心を生む。
今この状況での最善策。
ここで取る行動はただ1つ。
『見続ける』
恥ずかしい事ではない...。
視線をずらされて数秒後。
『寝るな』
ノートの端に書かれた文字。
起きてるよ。
『惚れちゃった?』
少年のような無邪気な笑顔、
その後に見せる少し大人びた微笑み。
あの頃から変わらない。何も変わらない。
『何か言えよ( ̄3 ̄)』
授業中。
数分後、教科書を立てうつ伏せた。
「おい、顔隠して寝るのはいいが
教科書が逆になってるぞー?」
野太い低い声が耳に障る。
微かに響き渡るノイズ。
聞き覚えのある笑い声も聞こえる。
乙女心は難しい。
男心も難しい。
お前には解けないだろう。
180°先に君はいない。
理性が崩れる昼下がり。
そっと光を閉ざした。