海といろいろ(2)
続きです。
海水浴当日ちょっと前の話、私は落ち着きなく部屋の中をウロウロしていた。
一周終わるたびに一回落ち着こうとは思っているのだが、机の上に出してあるゴーグルが視界に入ると再び足が動き出してしまうのだ。
「そんな分かりやすく浮かれてないで、宿題でもやったらどうニャ?」
「ゴロー、そればっか言ってると女の子に嫌われるよ。男の子にも」
「言わなかったら言わなかったでどっちにしろケチつけられるニャ」
女子児童徘徊の原因となっているゴーグルに手を伸ばす。もちろん水色だ。
それを頭に着けて、ベッドに飛び乗る。
水中とはまた違った浮遊感が私を受け止めた。
「うーみうみうみシーチキン......」
「......」
「......」
「......前ぶれなしに壊れるのやめてくれないかニャ?」
「シーチキンって鶏肉じゃないんだよ」
「会話の回路ぶちぎれてんのか」
「こわ」
ベッド上でぐにゃぐにゃ溶ける。
本当に今自分がどんな姿勢をしているのか分からない。ただ固形はない気がした。
ゴローを捕まえて抱き枕代わりにする。ちょっとサイズがもの足りなかった。
「急にどうしたニャ......」
「べーつにぃ......」
寝転がると思いのほかゴーグルが邪魔だったので、外して机の方に投げる。どこか......少なくとも机以外の場所に落ちた音がした。
ゴローの後頭部に鼻を沈めて息を吸う。嗅ぎ慣れた匂いがした。
昔からずっと一緒だったこともあって、その匂いはとても落ち着く。
浮かれているのは自分でもよく分かっているのだ。だからこうして落ち着く匂いに沈む。暑苦しさの中、鼓動が一定のリズムを刻んでいた。
「......ふぅ」
「人を麻薬みたいに使わないで欲しいニャ」
「猫でしょ」
「ぬいぐるみニャ。あと猫が吸われるのが常識なのを前提にして話すのやめるニャ」
海水浴の日は近い。
瞼を閉じると、そこにはもう白い砂に青い海。照りつける日差しに心地良い波の音。それ以外はあやふやなイメージしかなくボヤけている。
けれど、生まれて初めての海だ。
浮かれるなって方が無理な話。
「ゴロー」
「今度は何ニャ......」
「えへへぇ」
「寝ろ」
続きます。




