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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
9/547

My name is...(9)

続きです。

車窓の外側の景色が流れる。

「竹林にはついたかニャ」

ゴローがバッグの暗がりから覗く。

何故潜っているのだろう。

「今、丁度通り過ぎたよ」

「知ってるニャ」

木製の柵に囲まれた竹林が車体の後方に遠ざかっていく。

トラックは曲がり角を左に行き、更に加速する。

今更戻ってほしいと言えるわけもなかった。

「ゴロー、このまま行くと濃度はどうなりそう?」

「キラキラ粒子は順調に濃くなってるニャ」

「ダメか......」

好ましくない返答に落胆する。

車は走り続け、十数分経っても濃度は上がる一方だった。

「もう少しで着くからね」

おじさんが歯を見せて笑う。

「あ、あはははは」

ただ曖昧に笑って答えた。

無感動に窓の外を眺めていると、突然ゴローが服を引っ張ってきた。

「何どうしたの?」

「濃度が......」

「え?低くなってるの!?」

思わず声が大きくなってしまう。

不思議そうなおじさんの視線に

「なんでもないです」

と小さな声で答えた。

「そ、それで......この近くに居そうなの?」

今度は過剰なくらいひそひそ喋る。

「いや、濃度は高くなるばかりニャ」

「なんだ......」

その言葉に再び落胆する。

ゴローは、でもと話を続ける。

「いくらなんでも高すぎるニャ。このまま行けばおそらく......」

ゴローが言い切る前に、甲高いブレーキ音が響く。

「あいたぁっ!」

急ブレーキで大きく体勢を崩した私は、そのまま窓に頭をぶつけてしまった。

私が身を起こす前におじさんが叫ぶ。

「すまんなぁ、お嬢ちゃん。ちぃっと引き返させてもらう」

「やっぱりニャ」

ゴローが言うのと同時に体を起こす。

私の目に飛び込んできたのは、今まで見たこともないような光の粒の群れだった。

車が向きを変えようと動くが、視線は外さない。

いや、外せなかった。

粒子の輝きは強くなり、最高潮まで高まったとき......その光全てを飲み込んだ闇が視界を満たす。

その感覚は全くの初めてで、言い表すのであれば「闇に目が眩んだ」というような不可思議な感覚だった。

闇が晴れた後そこに佇むのは、一匹の恐竜のような生物だった。CG映像がそのまま現実に映し出されたような違和感がある。

体の大きさは、今乗っている軽トラより一回り大きいくらいだ。体型はいわゆるラプトル系を彷彿させるスリムなシルエットだが、体はオレンジ色の鉱石のような質感だ。

しかし、何よりも目を引くのは、その頭部にあるまるでハンマーの先っぽのような器官だった。

その巨体は、Uターンを終えた車を追いかける。

食い込んだ爪がアスファルトを剥がし、確かな振動が車内に伝わってくる。

唖然としてその姿を眺めていたが、ゴローの声で意識が引き戻される。

「えっと、戦うニャ......?」

その言葉に耳を疑い、微妙に半笑いみたいな表情で硬直する。

「......。いや、無理無理無理!デカい!デカすぎる!聞いてない!」

あんなのと戦ったら簡単に死ねてしまう。

「お、おじさん!」

「なんとか振り切ろうとはしてるんだがね......」

移動速度は同程度、追いつかれることはないかもしれないが......。

戦うしかないのだろうか......。

色々と思案を巡らせるが、どれも形をなさない。

来た道を戻っていたので、先程の曲がり角に差し掛かる。

そこで生まれるのは、方向転換のための......減速。

「まずいニャ!」

ゴローが正体を隠すのも忘れて叫ぶ。

減速に合わせて姿勢を低くしたアンキラサウルスの頭が、下から思い切り軽トラを叩く。

一瞬の浮遊につぎ、制御が効かなくなったトラックが横滑りし出す。

「「おおおおおおぉ」」

シートに押し付けられながら、みんなして焦りの滲んだ声を出す。

トラックは木の柵をぶち破って、竹林に突っ込み。やっとのことで止まった。

「いてててて......」

言いながら姿勢を立て直すが、既にそこにはアンキラサウルスの影が覆いかぶさっている。

「あ......あっ......」

どうしようもない現実に泣きたくなる。

「それだけじゃないニャ......」

竹林の奥から、お腹の底に低くような咆哮が聞こえる。それに伴って車体がビリビリ揺れる。

「これはまずいことになったな......」

おじさんは苦い表情だ。

「まさか......」

「そのまさかニャ」

私たちが、アンキラサウルスが居ると踏んだ竹林。やはりそこには居たわけで......。

竹林の奥から全く同じ姿が現れる。

二体のアンキラサウルスが誰も逃すまいと、車体の周りをゆったりと周る。

その目玉はしっかりと私を見つめているようだった。

続きます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 改名戦争、斬新で面白いです笑 主人公がしっかりした子なのでこれからどう物語が広がっていくのか楽しみです(≧ω≦) そして、わたしも赤い石欲しいです〜!
2021/09/11 07:07 退会済み
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