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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
8/547

My name is...(8)

続きです。

竹林のおじさん家の前まで来た。流石に無許可で入るわけにもいかないだろうとゴローに言われてしまったのだ。

おじさん家の庭に入ってインターホンを鳴らす。

「お庭広くていいなぁ」

「そう言えば、キミの家って庭あるのかニャ?」

「あることはあるよ。......小さいけど」

そんなことを話してる間に、扉が開く。

出迎えてくれた人は知らないお姉さんだった。

「こ、こんにちは」

人見知りはあまりしない方だと思うが、ほとんど不意打ちだったので声が小さくなってしまう。

「あら、可愛いお客さん。どちら様かな?」

「あー、えっと......あのあっちから来ました」

ゴローと一緒に辿ってきた道を指差して言う。

完全に情報不足である。

「あー......蒼井さん家のところかしら......」

何事か考えているようだったが、お姉さんが恐る恐るといった感じで言う。

「もしかして......きららちゃん?」

「あ、はい。そうです。おじさん居ますか?」

「あらぁ、すっかり大きくなったねぇ。私のこと覚えてる?まぁ覚えてないか。まだこーんなに小ちゃかったもんね」

一人でなんだか盛り上がり始めたが、こっちとしては全く記憶にないので反応に困る。

「おじ、おじさん......居ますか?」

思考放棄して同じ言葉を繰り返す。

お姉さんはその言葉を聞いて笑った。

「ごめんなさいね。今呼んでくるからちょっと待ってて」

そう言って家の奥に戻っていった

「お父さん」と呼ぶくぐもった声が聞こえてきた。

「邂逅......いや、久しぶりの再会はどうだったかニャ?」

バッグからゴローが見上げる。

「大体分かるでしょ」

「まぁ覚えてないものは仕方ないニャ」

言っている間に、おじさんがのそのそとやって来る。

毛髪の減少に時の流れを感じた。

「やぁやぁ、随分ご無沙汰だったね」

にこやかな表情と快活な喋り方には懐かしさを覚えた。

「久しぶりです」

おじさんが既に地肌が見えている頭を掻く。

「ほんで、今日はどうしたんだい?」

訊きながら、私の手に缶ジュースを握らせる。

「あ......ありがとうございます」

「なに、たまたまあっただけさ。それでご用件は何かな?おばあちゃんのお使い?」

おじさんが身を屈めて私と目線の高さを合わせる。

「あ、違くて......おじさんの竹林に入りたいんだけど、いいですか?」

おじさんはポケットの中から鍵を取り出して

「もちろん構わないさ」

と笑う。

そうだ。

あの時も確か軽トラに乗って行ったんだ。おばあちゃんが助手席で私が荷台。走ってるときの風が気持ちよかったんだ。

「ん?」

助手席に乗って、シートベルトをする。

おじさんは車のエンジンをかけ始める。

「あれー......?」

「どうしたニャ?」

明らかに様子のおかしい私にゴローが小声で尋ねる。

「いや、私たちこの先の竹林に潜んでるって踏んだじゃん」

「そうだけど、それがどうしたニャ?」

蘇った記憶と事実が噛み合わないのだ。

「記憶の中の車に乗ってた時間と、竹林までの距離が明らかに合致しないんだよね......」

エンジンがかかり、車が走り出す。

「ほいじゃ、出発するぞぉ」

おじさんはかなりやる気な様子だ。

「これは......」

ゴローが呟き、私を見る。

「あちゃーってやつだわ」

車体は庭を抜けて行った。

続きます。

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