カラーカテゴライズ(4)
続きです。
夕食を終えて、四人でくつろぐ。
すっかりみこちゃんの家にも慣れて、みんな伸び伸びとしていた。
どらこちゃんはベッドに横たわり、それにもたれるようにしてみこちゃんも座っている。
私はと言うと、部屋の隅に座って布団を敷くさくらを眺めていた。ゴローはどっかそこら辺飛んでると思う。
「あんたも手伝いなさいよ!」
「布団敷くのを手伝うって、どうすんのさ」
壁に寄りかかって足をバタバタ。
床を打つ足の振動が背骨に響いた。
さくらが布団を敷きながら、何事か考える。
「確かに布団って多人数で敷くと逆に面倒ね......」
さくらが布団を敷き終わる。
その後、それはそれとしてといった感じでボーっとしている私にデコピンした。
「うひぁっ......!?」
ベッドの方から声が上がる。
見るとどらこちゃんがみこちゃんのお腹に手を絡ませてもぞもぞしていた。
「ちょっと......やめてくださいよ」
みこちゃんが弱々しく抵抗する。
本気で嫌がっているわけでもないので、すぐになされるがままになった。
高い気温と湿度で当社比三割り増しになった重力に身を任せて、ずりずりと崩れる。
足の先が敷布団の下に潜り込み、布団が少し歪んだ。
背中にぴったりとくっついた冷たい床が心地良い。
仰向けになると自然、視線も上を向く。
蛍光灯の白い光が少しくすんだ白い天井を照らしていた。
「水色......かぁ」
腕枕をしてなんとはなしに呟く。
あれは何を意味していたのだろうか。
安直に捉えれば服の色だが、それが分かって、そしてその先は何なのだろう。
「水色って何よ?」
さくらの爪先が脇腹に食い込む。
布団の下に突っ込んでいた足も、抜けと足蹴にされる。
「今日あった超能力者が私を見てそー言ったの」
仕方なく体を起こして、あぐらをかく。
「なにそれ?」
「分かんない」
ゴローがバスタオルを持って入室する。
「タオルここ置いとくニャ」
「あんがと」
タオルをベッドの上隅に置いて、机の上に座る。
礼を言ったどらこちゃんはまたみこちゃんいじりに戻るのだった。
「お風呂四人入るかな?」
首を回してさくらを見る。
「あんた全員一緒にお風呂入るつもりなの......?」
さくらは布団を整えながら呆れて見せる。そして自分で整えた布団の上に座った。
「いーじゃん、別に。修学旅行みたいで面白いじゃんか」
「修学旅行までとっておきなさい」
流石に狭すぎるでしょと付け足す。
「第一、あんたとお風呂なんてごめんよ。布団だって独り占めしたいところなんだから」
言って布団の上に四肢を広げて倒れる。わりかしずっと動いていたから少し暑そうだった。
「むぅ......ムカつくぜ」
おりゃ、と布団に飛び込む。
さくらと膝同士がぶつかったのが、少し痛かった。
「ちょっと何すんのよ......!」
「うっさい、ばーか」
「バカはあんたでしょうが!」
さくらに肩を掴まれて、上下が入れ替わる。
あっという間にマウントを取られてしまった。
お互いに息があがる。
「この暑さで二人で寝るのか......」
「私と地獄に付き合ってもらうわよ」
「あの......クーラー着けましょうか?」
「「よろしく」」
垣根の影から様子を伺う。
家の中を動く影は一つ。
と言うことは水色は寝ているか、あるいは寝ていないにしても奇襲が狙えるわけだ。
ささっと玄関の前まで移動する。
作戦はこうだ。突然の来客を装って、家に侵入する。普通の人間なら、声を上げる間もなく拘束できるだろう。
あとは無警戒なその背中に攻撃を叩き込むだけだ。
意気揚々と扉を開け放って、玄関に立ち入る。
「あら、こんな時間に......」
早速音に反応して同居人が釣れる。
「ふっふっふっ、水色......じゃなかった。おたくの娘さん、ぶちこ......」
「あら、きららの友達?」
名乗りを上げているところに割り込まれる。
「あ、えっと......そう、です......?」
ペースを崩されて狼狽える。
「あの子、今日はお友達の家に泊まってるのよ。今頃お風呂入ってるくらいかしら?ごめんね」
「え......」
「ご飯だけでも食べてくかい?」
「あ、いや......いいです」
「あらそう」
カラカラと扉が閉じられる。
足から力が抜けて、その場に崩れる。
「ちっくしょぉぉぉぉぉ!私をコケにしやがって!水色ぉッ!!」
頬を涙が伝う。
大丈夫。涙の数だけ強くなれる......はず。
続きます。