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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
7/547

My name is...(7)

続きです。


仏間に戻ったら用意されていた麦わら帽子と麦茶を持って今度こそ外に出る。

今日は土曜日ということで、学校の誰かに出くわさないか少し心配だ。

朝ご飯から結構経っているのでみんな普通に出歩いてるだろう。

不登校児には気安く外出する機会などないのだ。平日だろうと休日だろうと、気が休まることはない。

念の為、帽子を深めに被っておいた。

「とりあえずお昼には帰るとして......。なんか居そうな場所とか、心あたりある?」

バッグの中のゴローに尋ねる。

ずっと首根っこを掴んで運ぶのも流石にアレだから、肩下げバッグを引っ張り出してきたのだ。

「ごろー?......ゴロー?」

バッグがもぞもぞと動いて、中からゴローの上半身が飛び出す。

「はぁはぁ......。し、死ぬほど暑いニャ。これボクバッグに潜ってる必要あるかニャ?」

だらしなく手......前足を投げ出してひぃひぃ言っている。

「四年生にもなってぬいぐるみとお出かけなんて思われたら恥ずかしいもん」

「別に大人でもフィギュア持ち出して旅行先で写真撮ったりする人いるニャ」

「私はやなの」

しかし、本当に暑さには参っているらしく内側に戻ろうとはしない。

犬猫は舌を出して体温調節をすると聞いたことがあるが、出す舌もないのでゴローは大変だ。

「しょうがないなぁ......。今日は特別だよ?」

「助かるニャ」

それでどうなんだいと同じ質問を重ねる。

「で、居そうな場所とか分かる?」

ゴローが耳をピクピクさせて答える。

「アンキラサウルスがどこに居るかは分からないけど、キラキラ粒子の濃度はなんとなく分かるニャ」

自慢げにヒゲを揺らす。ピクピクがマイブームなのかもしれない。

そのままの勢いで話を続ける。

「でも今回はボクの感知能力も必要なさそうニャ」

「え?どして?」

ゴローが前足をすっと伸ばす。

「アレを見るニャ」

その前足の延長線上には一本の電柱があった。

何やら張り紙があるようで、近寄って見てみる。

「怪物......注意?」

「読めなかった字を飛ばさないでほしいニャ。怪物出没注意ニャ」

「別に同じじゃん」

しばらく外出してなかったとは言え、まさかこんな張り紙があるとは......。

周りを見てみると

「あそこにも......あっ、あっちにも!」

ここら辺一帯の電柱にことごとく張り紙がある。

「なんでこんなに知れ渡ってるのに大ごとにならないんだろう?」

「それはボクから解説させてもらうニャ」

バッグからゴローが私を見上げる。

見た目は相応に可愛いので、つい頭を撫でてしまった。

「なっ......!き、急にどうしたニャ!?」

お互いに照れて、変な空気になってしまう。

「か、解説!」

あー、恥かいた。

今の感情を出来るだけ表情に出したくないが、顔の熱さや頬っぺたのムズムズした感じで赤面してるのが自分でもよくわかった。

「解説......解説ニャ」

落ち着きを取り戻したゴローが解説を始める。

「アンキラサウルスは、ある程度の調整能力を持っているニャ」

「調整能力?」

「そのまま環境調整する能力を意味するニャ。それによってアンキラサウルスに対する認識が歪み、結果としてたまに出る不審者レベルの認識になってるニャ」

「は、はぁ」

「まぁつまり、怪物に出くわすことは稀によくあるってことになっているニャ。だから誰もUMAだの何だのと囃し立てないのニャ」

張り紙を見てみると必ず決まったイラストが書かれている。

専用の標識のようなものが出来上がってしまうくらい馴染んでしまっているのか。

「これだけ沢山張り紙があるってことは、ここら辺に出るってことで間違いないよね」

少し古い家屋が立ち並ぶ私の家周辺の地域。

近くには雑木林もあるし、身を隠すのにも困らないだろう。

「いや......でも少しおかしいニャ。ここら辺のキラキラ粒子濃度はそんなに高くないニャ。町並みもあまりパッとしないし」

「どさくさに紛れて馬鹿にしないでよ。でもじゃあこの張り紙は?」

流石にこれだけの量があれば、ここで出ましたと言っているようなものだと思うのだが。

「待つニャ。今重大な計算ミスに気づいたニャ!」

大発見と言うような感じで、大きな声を出す。

「何?計算ミスって」

「アンキラサウルスが出現した場所のキラキラ粒子濃度が高いわけがないニャ!アンキラサウルスは飽和キラキラ粒子量を超えた時にそれらが結びついて生まれる。つまりキラキラ粒子の濃度が低い場所にこそ奴らは居るニャ!」

帽子の角度を少し変える。

やはり深く被りすぎたようだ。

「で、濃度が低いのは?」

「このまま道なりにまっすぐニャ。キラキラ粒子が薄くなっていってるのが見えるニャ」

ヒゲで感知するわけではないのかという言葉は飲み込んで、行き先を睨み付ける。

この先には小規模ながら竹林があったのを覚えている。居るとしたらそこかもしれない。

小さい頃おばあちゃんと一緒に大きくなりすぎた筍をスコップで切り倒したのだ。

竹林の持ち主のおじさんがくれた麦茶がすごく美味しかったのも印象に残っている。

「いこう、ゴロー」

「了解ニャ!」

続きます。

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