カラーカテゴライズ(1)
続きです。
裏路地に薄い闇が染み込む。
生温い風がひび割れた通路を撫で、静かに夜を告げた。
滲む街灯に照らされ伸びる影は三つ。
二人の少女と、一人の少女が対峙していた。
どこか威圧的な雰囲気の長髪の少女と、ツインテールのにこやかな少女。
その前には満身創痍の少女が跪いている。
うずくまる少女のブローチから赤い宝石の破片がポロリと落ちた。
長髪の少女が無表情で語り始める。
「人間とは不完全なもの。単体では完全になれない弱々しい生き物なの」
少女が言葉を受けて歯を食いしばる。
「......しかし、私たちは違う。力がある。人を超える力が......」
長髪の少女が屈んで目線を合わせる。
「進化は自らの弱さを知るところから始まる。敗北したあなたにチャンスをあげる。私の奴隷になりなさい」
華奢で色の白い腕が、土で汚れた少女の顎を掴む。
その少女の目は反抗的だ。
「まだ......!まだ負けてない!......誰がお前なんかに......!」
最後の力を振り絞り立ちあがろうとするが、圧倒的な力の前ではそれは無駄な抵抗でしかなかった。
ツインテールの少女が屈む。
「大丈夫だよ。あなたには可能性がある。私たちもそれを見込んでるの。あなたなら進化できる。完全になれる......ね?」
にこやかに笑うその瞳には黄金の光が宿っている。
その目を見た少女から力が抜ける。
「あなたは......眩しくて暖かい光......」
ツインテールの少女は依然笑みを崩さない。
跪く少女がツインテールの少女のその奥、既に立ち上がった長髪の少女を捉える。
「あなたは......あなたは一体何色なの......?」
少女の胸中に宿った感情。
それは畏怖だった。
少女はただその前に跪くばかり。
「じゃ、よろしくね」
ツインテールの少女がにっこりと手を振る。
立ち去る二人を追うことも叶わなかった。
「どらこちゃんってゲームとかやるんだね」
夏休み。
とりあえずやることもないので、どらこちゃんの家に遊びに来てみた。
みこちゃんもさくらも誘ったが今日は来ないみたいだ。
「まーな。あんま上手くはないけど......」
どらこちゃんはあぐらをかいて、私のプレイを見つめている。その足の間にはゴローが拘束されていた。
やっているのは少し古いロールプレイングゲーム。
ちゃっかりセーブデータを作ってもらって慣れないコントローラーを握っていた。
「あ、違うニャ!なんでそのスキル使うニャ!?」
ゴローが私のプレイに水を差す。
どらこちゃんの拘束から逃れようとジタバタしていた。
「だって今のところ威力一番高いのこれだし......」
「属性相性!そのスキル不利属性ニャ!こっち!こっちのやつ!」
「指示厨黙れー」
どらこちゃんがゴローを適当に宥める。
不服ながらゴローの指示に従うと敵キャラクターはあっさり倒れた。
「ほへー」
そういうものなのかと、エンカウント待ちでぐるぐる歩く。
「まぁでも実際ここから先はそういうのも気にしないと厳しいかもな」
どらこちゃんはゴローの耳を摘んで、体を揺らした。
私のプレイにもどかしさは感じていたらしい。
五時の鐘が鳴る。
「ん......?もうこんな時間?」
「はは......ゲームは時間泥棒だよなぁ」
どらこちゃんがしみじみと呟く。
「じゃ、そろそろ帰ろっか」
あまり長居しても迷惑だろうし、夕飯の手伝いもある。
「どらこ、今日はありがとうニャ」
やっとゴローがどらこちゃんから解放される。本人は気づいていないようだけど、尻尾がガッツリ掴まれていた。
「ほいさ。気をつけて帰んな」
どらこちゃんに見送られて、家を後にした。
続きます。




