ゴロー観察日記(3)
続きです。
ドッキリ。
それすなわちドッキリ。
言うなればドッキリ。
「しかし......」
何をしたものだろうか。
あまりお金がかかるようなのはやだし、こうパッと出来るやつがいい。
角から出てきて脅かすなんていうのはいささか幼稚だし、面白くもない。
「道にバナナ......」
頭を悩ますが、何というか自分の発想の貧困さ具合を味わうばかりだった。
「お昼ニャ......」
ゴローが部屋に入ってくる。
その全身を舐め回すように見るが、いい案は浮かばない。
「ご飯なんだけど......あの、何してるニャ?」
「ん......ああ、分かった」
立ち上がって、一階へ向かう。
食べればもしかしたら何かしら思いつくかもしれない。
階段を降りるときも頭の中はドッキリでいっぱいだった。
ケースその一。
頭の上から金だらいが落ちてきたら?
風呂場に行って、手桶を金だらいに変える。
それに用意した紐を......。
「これに紐、どうやって結ぶんだ......?」
冷蔵庫の扉に特に意味もなく張り付いてる磁石を使って紐は取り付けた。
次につっぱり棒を用意して、通路の上にセッティング。
「いや、届かんが......」
台所から椅子を引っ張ってくる。
家には台所と私の部屋くらいしか椅子がなく、それ以外の部屋は大体座布団か、何もないかだ。
椅子を廊下に置いて、その上に立つ。椅子の軋む音が聞こえた。
そこでつっぱり棒を鴨居の辺りで固定する。
後はその上に紐を通して、椅子から降りる。紐を引っ張ればたらいが持ち上がり、トラップの完成だ。
「よし......」
謎の闇に紛れる布に身を隠してゴローを待つ。
暑いから出来れば早く来てほしい。
廊下の暗がりで息を潜める。
ゴローが今どこにいるかは分からないが、まぁいずれは通ることになるはずだ。
ときどき布をバサバサして内側の空気を入れ替えながらゴローを待っていると、存外早くゴローは現れた。
ゴローの視線が仕掛けと私を往復する。
「まぁ流石にバレるか......」
「えっと......何?これは何ニャ?」
ゴローがリアクションに困って、立ち尽くす。別に立ってはいないけど。
「いいよ。こっち来て」
「えぇ......」
困惑しつつもこちらに向かって飛んできてくれた。
丁度いいタイミングで紐を離す。
するする音を立てて、たらいはゴローに直撃した。
廊下に落ちたたらいがグワングワンいい感じに揺れる。
「えぇ......」
唖然とするゴローに親指を立てて、ウィンクする。初めてウィンクしたけど案外上手く出来たと思う。
「えぇ......」
続きます。