My name is...(6)
続きです。
「ひとまず参加者が何人いるとかは分かるの?」
ゴローにマイクを向けるポーズをして訊く。
「分かるか分からないかで言えば分からないニャ」
「何その微妙な言い方?」
「気にしないで欲しいニャ。ただ分からないとだけ言うのが不服だっただけニャ」
手を机の上について、人差し指でトントン叩く。
何か考えているような雰囲気は出しているけど、頭の中は空っぽだ。
「ねぇ、別に私の目的は名前を変えさせないことだから勝たなくていい訳だよね?」
「まぁ勝つ必要はないニャ」
勝たなければ、その子は超能力が使えるままだ。つまりうまくいけば心強い仲間になる訳だ。
「戦った子を仲間に引き込むっていうのはゴロー的にどう?いい作戦だと思うんだけど......」
「いよいよやり口が汚いニャ......」
「でも一人でも引き込めれば、二人組で防衛し続けて決着がつかないーって出来るでしょ?」
二対一なら負けることもないのではないだろうか。
「どうもその作戦に拘りがあるみたいだけど、相方に心当たりがあるのかニャ?」
「たぶん一人」
あの子もきっとこの戦いに参加している筈だ。一応同じクラスではあったはずだし、案外すんなり受け入れてくれるかもしれない。
「まぁどっちにしても、その案には賛同しかねるニャ」
「なんでさ......」
机にうつ伏せになってゴローを見る。
「何度も言うけど、これから相手にしていく子たちも本気なんだ。ただでさえ例外的な存在であるキミがそんなことしたら、他の子たちに申し訳が立たないニャ」
あくまで正々堂々と。
ゴローはそこだけは譲れないみたいだ。
「でも私強くなさそうだし......」
確か体力テストとかでもいい成績を出したこともなかったと思う。
「超能力はキラキラ力依存だから自信がないと弱くなっちゃうニャ」
「きらきらちから......?」
「超能力の強さを決定する要素ニャ。ボクが空気中のキラキラ粒子を吸い込んでキミに送り込むことで超能力を可能にするニャ。キラキラ粒子はキラキラしてるものから発生するから、自分に自信があったりしてキラキラしたハートを持ってる人が単純に強くなる場合が多いニャ」
「用語が分からん......」
なんだか色々言ってるが、内容が頭に入らず最終的な理解が「なんか色々言ってるな」止まりだ。
「とにかく、自信を持ちなってことニャ」
「はぁ」
私は強い、私は強い、私は強い。
自己暗示に失敗して違和感で埋め尽くされる。
「私は強い......?」
「まぁそれが難しい場合は手っ取り早......くはないけど、キラキラ粒子を蓄える方法があるニャ」
ゴローが苦笑いしながら言う。
「空気中の飽和キラキラ粒子量を超えると、キラキラ粒子同士が滅煌輝結合してアンチキラキラモンスター......略してアンキラサウルスになるニャ。そいつを退治すれば、結合していた粒子を全て回収できるニャ」
「だから用語が分からん......」
とりあえず強くなる為にはモンスターをやっつける必要がある......と。
「それってズルくないの?」
「公式に推奨されてるから大丈夫ニャ。他の子たちも同じことするニャ」
つまり正々堂々の範疇と言うことらしい。
「なら探そう」
思い立ったが吉日ということで、玄関に向かう。
「おばあちゃーん!ちょっと出かけてくるー!」
靴を履いて、ゴローの首根っこを掴む。
虫取り網とか要るだろうか。
とりあえずは何も持たずに、引き戸を開く。
ガラガラと言う音共に、蒸し暑い空気とまだ辛うじて柔らかい日差しが差し込んでくる。
「こりゃ今日は暑くなるニャ」
ゴローが無い眉をひそめる。
「いざ!」と足を踏み出そうとすると、扉を開く音を聞きつけたおばあちゃんに引き止められる。
「外に行くなら飲み物持って行きなさい。それと帽子も。......あと部屋は片付けていこうね?」
「はーい......」
渋々靴を脱ぎ散らかして、家に上がりこむ。
ゴローが「先が思いやられるニャ」と呟いたのが聞こえた。
続きます。