Invisible one (7)
続きです。
「後のことは子供だよりっていうのも心細いよね......」
帰り道。
引っこ抜いた猫じゃらしを揺らしながら歩く。
「それもそうニャ」
「だ、だからこそ!早く見つけましょうよ!」
「ああ、そうだな」
どらこちゃんがみこちゃんの頭を撫でる。
みこちゃんはくすぐったそうだったけど、されるがままだった。
「で、どうするよ。葉月追跡の手がかりは途絶えたわけだけど」
さくらがどうしようもない事実を口にする。
「「うーん......」」
みんなで頭を悩ますが、何かいい案は浮かびそうもなかった。
布団に寝転がり、ゴローを枕元に呼ぶ。
「ねぇ?座敷童じゃなくて神隠しの場合も考えられない?」
それはちょっとした思いつきだった。
「どういうことかニャ」
ゴローが枕元に座る。
その光景はすっかり見慣れたものになっていた。
「その......隠れてるんじゃなくてさ、隠されてるのかもしれないって」
「ふん」
ゴローの相槌が続きを促す。
「だってさ、もう一ヵ月隠されてるわけでしょ。そしたらさ、もう私たちを襲ってきてそうなものだけど、私たち誰も襲われてないじゃん。だから誰かが隠してるんじゃないかなって......」
少し考える素振りを見せてゴローが言う。
「もう一人超能力者が居て、そいつが隠してる。もしそうだとすると、隠す理由は何かニャ?」
何故隠す必要があったのか、ちょっと考えて諦める。
「もしもう一人の誰かがいるとなると、事態は思わしくないニャ」
「え?何で?」
「隠す理由ニャ。殺人犯は死体を隠すだろう?」
ゴローの突拍子のない言葉に、寝返りを打つ。
「そんなことあるわけないじゃんか......」
「それは分からないニャ」
「まさか......」
信じられないが、確かに理屈は通っている。
まさか......ね。
「ゴロー......?」
私が呼ぶと背後の気配が動く。
「大丈夫ニャ。あくまで可能性の話ニャ。案外、能力が使いこなせてないとかそういう理由かもしれないニャ」
とりあえず、足掛かりとなるものを見つけないと。
いっそ襲ってくるなら襲ってきて欲しいくらいだった。
何度日付けが変わったか、もう数えていない。
廃工場の床は固く、冷たかった。
食べるのには困っていない。
何せ誰にも見えないんだから。
物を盗る抵抗も薄れ始めてしまっていた。
「いよいよだな......」
外で風が吹く。
辺りは既に夜の帳が下り始めている。
最初は怖くて仕方なかった夜も、今は心が鈍くなってしまい何も感じない。
「私はここに居るのかな......」
それを知るのは私一人のはずだけど、もう私すらわからなくなってしまっていた。
もしかしたら自分はもう死んでいて幽霊なのかもしれない。
もしそうでも構わないから、だから......。
「誰か私を見つけて......」
赤い宝石が、ポケットの中転がった。
続きます。