表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
57/547

Invisible one (5)

続きです。

今日はいつも通りの時間に来て席に着く。

葉月さんの席は今日も誰も座っていない。

「よっ、おはよ」

「おはようございます」

「おはよぉ......」

どらこちゃんが私の肩を叩く。

寝ぼけた頭に鈍い衝撃が走った。

「あんたねぇ......寝癖ついてるわよ......」

さくらが呆れながら私の髪を撫で付ける。その感触が私の眠気を増長させた。

 ゴローが手提げカバンから這い出す。

「昨日結局座敷童の下りを思い出した所為でまともに寝られてないニャ。空が白んでからやっと寝たニャ」

「なんか一周回って器用なやつだな......」

 どらこちゃんが苦笑いで頭を掻く。

反論したいところだったけど、頭が回らないで言葉が出て来なかった。

「まっ、別になんでもいいけど......」

 さくらが私の髪を引っ張り始める。

 鬱陶しかったので手で払った。

 チャイムが鳴ると、どらこちゃんたちが慌てて席に着く。

他の生徒たちもバタバタ自分の席に走っていった。

 さくらも机に突っ伏す私の寝癖を押さえつけて黒板の方を向いた。

 教室に先生が入ってくる。

メガネが日の光を反射して白く光っていた。

その目が私に向く。

あれ?何かしたかな?と思いつつも体を動かす気になれない。あ、この姿勢が原因か。

「蒼井さん、夏休み前だからってだらしないですよ......」

 先生に軽く注意される。

このままだと本気で怒られてしまうので、渋々体を起こした。

 しばらく不登校だったからあまり実感が湧かないが、どうももう少しで夏休みらしい。

夏休み......。

「夏休みかぁ......」

「あんたねぇ......」

 さくらが呆れる。

 まだ眠気は振り払えないが、朝の会はそんなことお構いなしに始まるのだった。



 昼休み。

「うへぇー」と、机の上でつぶれる。

結局授業中の居眠りで何度も怒られる羽目になってしまった。

しかし、お陰で今は頭がすっきりしている。

思考を眠気の霧が覆うことはもうない。

「これ」

 さくらのデコピンが飛ぶ。

「何さぁ」

「今日葉月の家に行くんでしょ?」

「行くけど......それが?」

 私のリアクションに再びデコピンが飛ぶ。

「それがじゃないでしょうが......まったく。家の場所知ってるの?」

「え、それは......?」

 そう言えば知らなかった。

 私の表情を見て察したさくらがまたまた呆れる。

「あんたねぇ......」

「まぁまぁ、先生に聞けばいいんだし」

 そう言って席を立つ。

なんとはなしに葉月さんの机を見に行く。さくらも無言で着いてきていた。

 机の引き出しには手紙やら何やらがたくさん溜まっている。

その量から相当長い間来ていないだろうと見当がついた。

「この手紙......一月以上は前ね」

 さくらも机を漁るが、特にめぼしいものはなかったらしい。

 教室の後ろの黒板に、先生が掲示物を貼りに来る。

「先生来たわよ?今のうちに聞いちゃいなさいよ」

「えぇ」

 さっき怒られたばかりなのであまり行きたくないのだが......。

「そんな情け無い顔しないでよ......」

 先生とさくらの間を何度も視線を往復させる。

「......」

「......分かったわよ。私が行けばいいんでしょ......」

 珍しくさくらが折れる。

やってみるもんだ。

 しばらくしてさくらが帰ってくる。

「場所は分かった。先生も普通に葉月について話すし、空席に違和感はないみたいね」

「おっ何してんの?」

 どらこちゃんが姿を現す。

珍しくみこちゃんは一緒じゃなかった。

「みこちゃんは......?」

「あいつは今トイレ。もうちょいで来ると思うぜ」

「で、何してんだ?」と再びどらこちゃんが尋ねる。

「あぁ......今葉月さんの家が分かったとこ」

「ん、そうか。じゃ後で行くべ」



 午後の授業は怒られることなく過ごせた。まぁ内容はよく分からないところが多いので、寝ててもあまり変わらないのかもしれない。

 今日は目的も決まっているので、無駄話をせずに外に出ている。

「おーい、早くしろよ」

「わわ、待ってください」

 どらこちゃんに呼ばれて、みこちゃんが踵を踏みながら校舎から出てくる。

「これで全員揃ったわね」

「そんじゃまぁ......行く?」

 日はまだ高い。

葉月さんの家に向かって歩き出した。

「ちょっと......まだ、靴が......!待ってくださいよぉ!」

続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ