ランチタイム(18)
続きです。
待ちに待った給食。
今日はどうにも冴えないので、これで一旦リセットだ。
既に席は並べ替え終わり、後は配膳を待つのみ。
今週の給食当番は・・・・・・。
「あ・・・・・・」
特に何も考えずに当番を確認すると、そこにはスープを盛り付けるみこの姿があった。
別に大した作業でもないが、それでもしっかり集中しているようでこちらの視線には気づかない。
他の給食当番は隣の人と喋ったりしていて、だからその真面目さが際立った。
真面目で、優しく・・・・・・。
「そうか・・・・・・」
そこで合点がいく。
みこのことが気になってしまうのは、そこだったのだ。
乱暴で、優しくなんかないあたし。
自分の名前に相応しくないあたしの、要は憧れなのだ。
そういうふうにあれたらどれだけよかったろうと、だからみこが気になってしまうのだ。
一つ整理がついたような気がして、モヤモヤした何かが晴れる。
体が軽くなったようにさえ思えた。
となれば後はこの空腹を満たすだけだ。
また放課後に一仕事あるわけで、それに備えねばならない。
さっきまでとは違った気分で配膳を待つ。
そこでもう一度みこの方を見ると・・・・・・。
「ん・・・・・・?」
なんだか少し様子がおかしかった。
大量のスープが入った筒状の容器の中を覗くようにして固まっている。
お椀に注ぐ手は完全に止まって、それどころかそのまま落としてしまいそうですらある。
配膳時するようになっているマスクをしている所為で表情はよく分からないが、さっきまでの様子と比べると明らかに普通じゃない。
しばらくすると、持っていたオタマが本当に手のひらから滑り落ちる。
それはスープの容器に落ちて、カシャンと音を立てた。
それでハッとしたのか、みこが再び動き出す。
目を擦って、オタマを拾い上げる。
そして再びスープをすくって椀に注ぐ作業に戻った。
「なんだろ・・・・・・」
眠かったんだろうか。
いくら真面目とはいえ、眠いときは眠いものだ。
まだなんとなくボーッとしているような雰囲気があるし、まぁ・・・・・・そうなのかもしれない。
配膳が終わるまで、そう時間は要さない。
あたしの机の上にも給食はやってきて、しばらく待てば全てが整う。
みこも配膳用の白衣を脱いで、マスクも外し席に着いている。
やっと昼食にありつける。
待ち侘びたその瞬間を目前に手をすり合わせる。
そして・・・・・・。
ランチタイムが始まった。
続きます。




