ランチタイム(12)
続きです。
しばらくすると、やっとみこ母がやってくる。
実際はそう何分とかかっていないのだが、体感では長かった。
「およ? 二人とも気まずそうじゃん。うける」
「うけないでくださいよ・・・・・・。ほんと、ごめんなさい・・・・・・お母さんが」
母親の大人らしからぬ態度に、みこがため息をつく。
「そんなこと言っちゃって・・・・・・照れてるだけだもんね。本当はお母さん大好きなの知ってるから」
「ほんと・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
みこはその奔放さに振り回されているようだけど、そのフリーダム加減が今はありがたかった。
少なくとも、みこにさっきまでのような硬さはない。
あたしはというと・・・・・・まぁ他人の親のことなので曖昧に笑うことしかできない。
みこ母が運んできた料理が、テーブルの上で湯気を立ち上らせている。
見たところ普通の肉野菜炒めといったような見た目だが、どうも香りが妙な気がする。
妙というか、嗅いだことのない匂いだ。
「ささ、遠慮なくお食べ・・・・・・!」
勧められるままにとりあえず食べてみる。
緊張感のせいかすんなり喉を通らないが、味を確かめるのにはこっちの方がむしろいいのかもしれない。
「・・・・・・?」
が、いまいち分からない。
食べ物、の味だ。
それは間違いない。
けど、何だ・・・・・・これ?
「すみません・・・・・・うちのお母さん、あんまり料理上手じゃなくて。無理して食べない方が良いですよ」
「ひどっ!?」
みこはそう言うが、実際とても食べられないような味なわけではない。
ただ・・・・・・。
「不味いとかじゃないすけど、なんか・・・・・・変わった味ですね・・・・・・」
まるで知らない味。
甘い辛い苦いというような言葉で表せない。
何だそれって感じの表現だが、間違いなく何だこれっていう味だ。
あたしのリアクションを受けてみこも同じ料理を口に運ぶ。
「うん・・・・・・今日は比較的当たりですね。久しぶりに人を連れ込んだからちょっと張り切ったんでしょう・・・・・・」
みこの表情は渋く、少なくとも美味しいという感想ではなさそうだ。
「大丈夫、大丈夫! 食べちゃえば一緒! 不味くないなら十分だよ」
十分ではないだろ。
しかしまぁ、新鮮という意味でなら・・・・・・。
それほど悪くはない、可能性も否めない。
こともない。
しかしどうやって作っているというのだろう。
キッチンを覗いた感じでは、奇異な調味料が備え付けてあるように見えない。
謎は深まるばかりだ。
続きます。




