ランチタイム(4)
続きです。
スーパー上空にたどり着くと、ゆっくりと建物の裏に着地した。
別に見られても不都合はないが、まぁ目立たないに越したことはない。
上空から見下ろした感じだと、駐車場の混み具合はそこそこと言ったところか。
無駄に広い駐車場は、やや隙間を残したままだった。
狙い通り賑わってはいるようだが、とりあえず外側には異常は見つけられない。
まぁ出ないときは出ないし、なんならその方が平和でいいくらいだ。
目立った異常が無いかだけを確認しながら、スーパーの表側にまわる。
窓から覗ける内側の様子も、普段と特段変わりないようだ。
「こりゃ今日はダメかもな・・・・・・」
言いつつも、頭の中では既に次の候補について考え始めている。
飛んで向かうにしても、あと行けるとしたらもう一箇所程度になってしまうだろう。
腕を組んで、頭を悩ませながら、スーパーの自動ドアを潜る。
その瞬間、店内放送と管理された温度があたしをつつんだ。
やや明るすぎるくらいの照明。
独特の野菜コーナーの匂い。
カートの車輪が転がる音。
まとまりの無い情報が行ったり来たり、重なったりすれ違ったり。
少し首を回して、歩きながら辺りを見回すが、異常らしい異常は見受けられない。
そうやって店内の様子を窺っていると、見覚えのある人を見つける。
もっとも一方的にこちらが知っているというだけで、向こうは知らないだろうが。
野菜コーナーで、のんびりと買い物をする若い女性。
確かあたしのクラスの・・・・・・みこ、とか言っただろうか。
その子の母親だ。
そのみこの母親は、何が違うんだか、それぞれ左右に一袋ずつ同じものをいれて熱心に見比べている。
別にみこ本人ともほとんど面識も無いし、わざわざ話しかけるような間柄でもない。
その他にも、様々なコーナーをめぐる。
どうせなら何か買って帰りたい気持ちもあるが、生憎持ち合わせがない。
というかサイフを持ってきていない。
いよいよ隅から隅まで見渡して、ほんとのほんとに今日は異常無しと判断する。
「はぁ・・・・・・」
どうするかと考えながらスーパーを出ようとする。
そのとき・・・・・・。
食品コーナーの一角で、異変があった。
空気がどよめき、買い物客がざわつく。
「なんだ・・・・・・?」
何事かと振り返れば、そこにはとうとう怪物の姿が見つかった。
発見の喜びも束の間、すぐそばにみこの母親が居るのを見つける。
既に人の流れは店外に向かっているが、彼女はあまりにも怪物との距離が近すぎてその場に取り残されている。
流石にクラスメートの親に何かあったとなれば、あたしの立つ瀬はいよいよない。
迷っている暇も、その必要も無い。
怪物が出現したのだけは明らかだが、まだその全貌は明らかにならない。
だが何にしたってまず人を助けないと。
いくら利己的で不純な動機で狩りをしているとしても、誰かを助けたい、この思いは偽りではないのだから。
まだ見えぬ敵に向かって駆け出す。
いよいよ、接敵だ。
続きます。




