渦巻き絵本(6)
続きです。
「ちっくしょう!よくもどらこちゃんを!許さないぞさくら!」
「それどっちも中の人ニャ......」
配役としては、騎士があの気の弱そうな子で、魔女がその子、それ以外はあの子って感じだよ。
「また盛大なネタバレを食らった気がするニャ......」
ま、まぁ......気にしないで。
続き......いくからね。
「私また悪役なのね......。別にだから何とは言わないけど......」
つ......続き、いくよ!
「酷い!どうしてこんなことを!?」
魔女が目に涙をためて叫びます。
しかし、弓の魔女はそんなことを全く気にしません。
つまらなそうに商人に近づいて、その懐を漁るのでした。
「へっ......結構あんじゃない......」
弓の魔女の目がギラギラ輝きます。
魔女は、それを見てとても嫌な気持ちになりました。
「どうして......!?」
魔女は同じことをもう一度言います。
すると弓の魔女は鬱陶しそうに睨みつけました。
その怖い顔に、魔女は思わず身を竦めます。
「へっ......。そんなこと分かってるだろ?私が魔女だからだよ!」
「私だって魔女だよ!でもこんなことしたくないし、していいとも思わない!」
怒った魔女は、沢山の人がいるのにもかかわらずうち明けてしまいました。
「ま、まずいニャ......!」
町の人たちは固唾を飲んで、向かい合う二人を見守ります。
「へぇ......?あんたも魔女なのか。なら尚更何故私たち魔女が獰猛なのか、よく分かるはずだ」
「分からないよ!」
魔女の目から涙が溢れます。
「お前......魔女の苦しみを知らないというのか......?」
弓の魔女は不思議そうに魔女に尋ねました。
「苦しいからってこんなことしていい理由にならない!」
魔女は怒っていました。
深く、深く怒っていました。
弓の魔女が「やはり......」と呟きます。
「どうやら本当に知らないみたいだな。魔女の苦しみも、喜びも......。何も苦しいからって、血を求めるわけじゃないさ。血を求めるから苦しいのさ」
「ならどうして!!」
どうしてこんなことをするんだと、弓の魔女に詰め寄ります。
弓の魔女はニヤリと、笑って見せました。
「それこそ魔女の喜びに他ならないからさ!」
弓の魔女がバサッと両腕を広げます。
するとあちこちに魔法の矢が飛び散りました。
それは何人かの人々を貫きます。
「そんなのおかしいよ!」
弓の魔女は、魔女の顎に指を伸ばします。
「おかしいから魔女なのさ」
魔女の顎をなぞる指は、とても冷たくて嫌な感じでした。
「私たち魔女は、その矛盾した運命から脱するために互いに争っている!殺したくて、死にたくて、だから私たちは戦うのさ!」
仰々しく手のひらを掲げて、弓の魔女が高らかに宣言しました。
「どうやら戦うしかないみたいニャ......」
魔女は渋々箒を取り出しました。
殺したくもないし、死にたくもない魔女にとって、戦いは苦痛でしかなかったのでした。
続きます。