渦巻き絵本(4)
続きです。
「酷い目にあった......」
ごめんごめん、岩かなんかにしといた方がよかったね。
「敵に情けかけられてるニャ......」
「まだ!まだかけられてないから!情けをかければよかったっていう後悔だから!」
「往生際が悪いぞ?」
「ドラゴンが喋るな!」
「作品によっては普通に喋ると思いますよ」
......なんか、ほんとにごめんね。
「ともかく!続き!」
ああ......えっと、どこまで話したかな......?
「大丈夫かニャ......」
ごほん......それじゃあ......。
燃える焚き火のそばで、魔女たちはたくさんの話をしました。
森の中では知ることの出来なかった龍の棲む海のこと、巨大な崖の向こうにある過去の文明の遺跡のこと、そして......最近の魔女の被害のこと。
本当にたくさんの話をしました。
気がつけば日は沈み、川の流れには月が浮かんでいました。
「グォー......」
「すぅ......すぅ......」
丸まったドラゴンに寄りかかって騎士は何日ぶりかの休息をとっています。
炎の柔らかな光に照らされたその寝顔は、とても幸せそうでした。
「よいしょ......」
魔女は騎士に毛布を被せます。
火を消して、まだ眠っているクロを背に月明かりを頼りにその場を後にするのでした。
「ちょっとさみしいな......」
月を見上げて独り言。
きっとまたいい出会いがあるはずです。
川沿いをとぼとぼ歩いて行くのでした。
やがてまた日が昇り、魔女の旅路を照らします。
「少し先にお城が見えるね」
「むにゃむにゃ......もう朝かニャ......。二人は......置いてきてしまったんだね......。けども仕方ないニャ......」
クロは眠い目をこすって、魔女の肩からお城を覗きました。
お城の門の前まで来ると、二人の衛兵が槍を持って立っていました。
「ふた......り......?」
「どう見ても、みこ一人ニャ......」
ちょっともう一人の子は他の役の準備中で......。
「は......はぁ......なるほど」
「あの......私はどうすれば......」
まぁ......なんか二人になったつもりで......よろしく!
「そんなぁ......」
右側の衛兵が、魔女に向かって槍を突き出します。
「むっ!怪しいやつであります!」
魔女はびっくりして、槍の先端を見つめたまま動けなくなってしまいました。
左側の衛兵が、右側の衛兵の槍を引っ掴んで制します。
「やめるであります!無闇にそんなことするものではありません!」
「し、しかし!怪しすぎであります!」
衛兵たちは睨み合っています。
二人とも仲が悪い様子です。
とうとう掴み合いの喧嘩が始まってしまいました。
「え?えっ?......喧嘩!?一人でですか!?」
が、頑張って......。
「や、やめるであります!」
「そっちこそやめるであります!」
鎧をガチャガチャ鳴らして、取っ組み合いをします。
「痛いであります!」
「痛いであります!」
場所も入れ替わってしまい、魔女にはどっちがどっちだか分からなくなってしまいました。
「......お邪魔しまーす」
「お邪魔するニャ......」
魔女は喧嘩をする衛兵の横を、恐る恐る通り過ぎて行きました。
続きます。